第29話

「……そういう声出るんだ?新鮮」


「っ、」


「そうやって女出すのは……俺だけでいいじゃん」


「やっ、……っ」



さらに登った腕がスカートを捲り上げた。露出する右足の膝裏を抱えた響は悪戯に舌舐めずりをする。



「な、分かっただろ?捲り上げれば丈が長いなんて関係ねぇ」


「……っ、」


「これ以上されたくなかったら黙って着替えろ」



毛穴の見えない透明感のある肌。高い鼻、大きな瞳、形のいい唇。


全てが美しい彼は紛れもなく私が守ってきた“プリンセス”のはずなのに……



「涼、脱ぐの?脱がねーの?……どっち?」



鋭い瞳で圧をかけるこの姿は……——

絶対支配の“王様”だ。




今、私が「脱がない」と言えば、彼は何をするのだろうか。



私を女として見てくれるのだろうか。


私を女として……認めてくれるのだろうか。



関係を変えたくない。このまま一番近い幼馴染でいたい。彼と同じ人生を歩めなくても、彼の人生に寄り添って生きていきたい。




——……なんて、嘘。




全部嘘。言い訳。保険。なりたい自分になれない私の逃げ道。諦め。




本当は……——

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