第28話

私より背の高い響が覆いかぶさったことにより、廊下に尻餅をつかされた。すぐに「退いて」と振りかざした手はするりと奪われて床に縫い付けられる。



「ちょ……響、何?」


「人には散々危機感持てとか言っておいて、自分はどうなんだよ」



顎を上げて見下ろされ、そんな角度からでも格好いいなんてずるいと思った。



「涼がどうしてもこれ着て外に出るっていうなら……俺が脱がせる」


「はっ?!」



足首からするりと上がってくる彼の指先。


撫でるようなささやかな刺激がくすぐったくて「んっ」と短い声を出せば「他の男に触られても、そんな声出すの?」と低い声で問われた。



「なあ、さっき丈長いって言ったよな?」


「やだ、響……待っ、」


「こんだけスリット入ってたら……丈長いって言わねーの」


「……っ、」



ギラリと光る瞳も、振り払えない手も怖いのにぎゅっと心臓が唸る。鼻口いっぱいに広がる響の香りに酔ってしまいそう。


いつも響に付き纏っている女の子たちなら卒倒してもおかしくない状況だ。私の強固な免疫も……さすがにここまで直接的な接触に耐えられるわけがない。



「ストッキングなんて持ってたんだ」


「……んっ、ぁ」



太ももの辺りでストッキングをパチンと弾かれ、思わず声が漏れた。


自分でも聞いたことがない艶のある声。慌てて口を押さえれば、クスリという笑い声とともに響の唇が耳に触れる。

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