第27話
「やっぱり、……変?」
「変、っていうか……無理」
「どういう意味。生理的にってこと?」
「は?ちげーよ。……あーもういいから、早くいつもの格好に着替えろよ」
苛立った様子で言葉を濁す響に徐々に苛立ちはじめる。
「意味わからない。響に指図される筋合いない」
「涼……っ」
これは八つ当たり。せっかく女の子のおしゃれを楽しもうとした幼馴染に酷いことをいうその無神経さに腹が立ってきたんだ。
「着替えない。このまま大学行く」
「……」
意地になって響を睨めば、困ったように彼の眉間に皺が寄る。いつも困らされている側の人間としてはいい気味だ。
加藤さんも田中さんも「おしゃれは自分が楽しむものだ」って言っていた。瀬古さんだって、スカート似合うはずって言ってくれた。
ショップの店員さんも「モデルみたいで素敵」って言ってた。私だって何度も鏡で見たけど別に変ではないという結論に至った。
ほら、5対1。響に似合わないと言われたからって何だ。何と言われようが今日はスカートを着て出かけるんだ。絶対に!
「ほら、早く行かなきゃ遅刻するよ」
「……」
不機嫌を表に出しつつ、響を押し退けて外に出ようと試みる。
しかし、押した胸はびくともせず、それどころか突然肩を掴まれ部屋の中に押し戻された。
「なんで急にそんなの履くんだよ……」
「え?」
独り言のようにボソリと呟いた響。反射で彼を見上げると、色素の薄いはずの瞳は真っ黒に陰り、何故だか背筋にゾッと悪寒が走った。
「ひび、き……?」
「足、他人に見せんの?無理なんだけど」
「は?……いや、丈長いからそんなに見えな……」
「本気で言ってる?」
「……ひゃっ、ちょ、」
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