第26話

チャイム音とともに部屋の外から名前を呼ばれた。慌ててスマホを確認すれば、5分前に【家出る】と連絡が入っていて。


響と私の家は目と鼻の先だ。ゆっくり歩いても、5分あればお互いの家に到着できる。



「ちょっと待ってて!」


「はよー、遅刻すんぞー」


「はーい!分かってるから」



もう着替えている暇はないと覚悟を決めて、スマホをバックに突っ込み、玄関へ向かう。



「おはよう。ごめんね待たせて」


「おー、おはよ……って、……お前、何その格好」


「っ、」



気づいた。響のことだから意外と気づかないかと思ったのに。



「あー……えっと、気分転換?」


「は?」


「ほら、暑いし。スカートならパンツより涼しいかなぁ……みたいな」


「……」



別に褒めて欲しかったわけではない。期待なんてしてなかった。でも……



「は、無理なんだけど」


「……」


「早く着替えてこい」


「……」



まさかここまで嫌な顔をされるとは思わなかった。


不安だった分、この反応は結構堪える。


褒めて欲しかったわけじゃない、期待してなかった……なんて嘘。嘘っていうか、正確には自分に言い聞かせていただけだ。


こういう最悪な反応をされたときに、ほらね、予想してたって自分を守れるように沢山かけていた保険。


でも、そんなの無意味だった。そんなのかけていたって普通に傷つく。恥ずかしくて消えたくなる。


こんなことなら自信満々でいれば良かった。褒められる気満々で。そうしたら響に貶されたところで「は?新鮮だろ?!褒めろよ!」って逆ギレできたのかも。

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