9話 心からのおもてなしを

「いらっしゃいませ」


 警戒心を抱かせないように、失礼が無いように。ただ、丁寧な言葉と一礼でお客様を迎え。お客様が望む品を提供し、二度目の一礼で見送る。


 言葉で羅列してしまえば単純となる仕事は、以前に比べて充実するものになり、埋め合わせの無駄な行為をする癖はいつしかなくなっていった。

 

 不快にさせないように。心残りが出ないように。例え今日死ぬとしても、最後の食事は良いものだったとそう思えるように。私ができる最大の物を提出する。それは自分の店だとしても、ダンジョンの店だとしても変わるものではない。


 ダンジョンで死ぬのも、日常で事故や病気で死ぬのも等しく死なのだから。


 だからこそ、自分の店の常連だとしても、二度と合わないだろう冒険者だとしても等しく。


 ただひたすらに、心からのおもてなしをしよう。

 

 「行ってらっしゃいませ、またのご来店をお待ちしています」

 

  

 

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ダンジョンボス部屋前の喫茶店 満足市民 @manzokumin

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