4話 来店
よく分からないまま制服を着て、よく分からないままカウンターに着いた。制服は本当に沢山の種類あったが、自分の店の制服に一番近いものを選ぶことにした。
広く綺麗な店内。辺りに並ぶ高級な機材や食器。自分の寂れた店とは違う空間ではあったが、日常と同じ立ち位置と動作をしているうちにだんだんと落ち着いてきた。
厨房を確認してみたが、確かに食品関係は十分……というか過剰なくらい豊富で、珈琲豆や茶葉などの飲料関係は一般で売られるものから高級品まで一通り揃っているようだった。
そんな諸々の確認をしていると、1時間という時間はすっかり経ってしまった。
チリン
微かなドア鈴の音と共にゆっくりと前のドアが開いた。
いきなり出会う冒険者にかける言葉は何がいいか少し考えたものの、結局は普段の挨拶に帰結した。
「いらっしゃいま────」
そう言い終わる前に矢が頬を掠めた。
「動くな!」
弓をつがえながらフルプレートに身を包んだ男性が入り込んできた。
普通に命の危機ではあったものの、自分でも驚くほど冷静でいられた。きっと、先ほどの衝撃の所為で感覚が麻痺しているのだろう。
「あの、人間です、敵意はありません」
「人間?」
当然困惑した声だった。
「いや、そのまま動くな」
男は矢をつがえたまま、呪文のようなものを唱え出した。そういえば擬態を見抜く魔法があると、たまに通ってくれる冒険者が言っていたような覚えがあった。
「…………本当に人間か」
何やら、珍獣を見るような目で見られている気がする。
「君、何故こんなところに居る」
「ええと……バ、バイトです」
「バイト?」
「このダンジョンのボスを名乗る方に、雇われまして。なんでも、貴方と全力で戦いたいのでここで休憩して英気を養っていただきたいらしいです」
「…………意味不明だな」
「ですよね……どうされます? 無理強いをしないとか言っていましたが」
伝えなければいけないことはだいたい伝えた。あとは彼の判断に身を任せよう。
「……少し前に体力が前回する床があったが、あれもダンジョンボスとやらの仕業か?」
「ですね」
「……」
男は矢を構えたまま、しばらく考え込んでいるようだったが。少し頷くと引いていた弓を下ろした。
「いいだろう、そのふざけたもてなしを受けてやろう」
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