近づいてきたところを一太刀で勝ちだと思ったんだけどね。

　バレたみたい。途中から近づかなくなっちゃった。

　あと、何か声を上げているが届かない。

　ま、当然だよね。時が止まってるだし。

　光すら正常な動きができないのに音がまともなわけがないよね。

　ただ、驚きと疑問が顔に表れている。

　ま、早く終わらせよう。

　この現状の全力がいつまでも続くわけでもないし、力も見せたくないし。

　というか本気を出してから決め切るのに時間がかかりすぎている。

　それにしてもさっきは期待外れと言ったが訂正しよう。

　でも、私の下位互換であること。

　三番煎じであることには変わりない。

　だから変わり映えしない剣戟が繰り返される。

　...少しも楽しくない。

　アス様と殺（や）るときのような切迫感、ピリピリとした空気があまりにも少ない。

　あの時とは何かが足りていない。

　戦いに対してじゃなく、もっと根本的な何かが。

　今考えても仕方ないけど自分の為にならない、そう思ってしまう。

　そんなことを考えている間にも少しずつ追い詰めていく。

　当たり前だ。

　技術がもし同じでも、身体能力に差がありすぎる。

　そして、そのままチェックメイト、と。

　首元に刀を突く直前まで持っていく。

「君の負けだ」

　side:ヒイラギ

　終わったか。

　ま、勝てるわけがなかった。というべきだな。

　天才が化け物に勝てるわけがなかったか。

　やはり、彼女の強さは技術でも、魔術でもなく、その圧倒的な魔力量と魔力操作だな。

　ないと信じたい、ユキと敵対することのことを考え、魔力操作を封じることでまだ戦いにはなると思う。

　戦いになるだけで技術も身体能力もトップクラス。剣聖や覇王あたりが必要になるだろうな。

　...限りなく難しいだろうな。

　剣聖は強い奴とは仲良くなりたいタイプだし、覇王は無関心だし。

　あまりにも絶望的過ぎるよな。

　ま、もう終わったし帰るか。

　ギルドに戻る時にふと考える。

　僕は勝てるのだろうか。

　僕の強さの本質が見抜かれなかったら負けはしないだろう。勝てもしないだろうけど。

　僕が勝てるとしたらギルドを動かして大多数の人間を彼女にぶつけるぐらいかな。

　...不可能に近いね。

　長室で絶望しながら息を吐く。

「Sランクが敵対した時のために個別に対策は考えているがユキや剣聖、覇王は対策という対策が浮かばんな。他のSに比べて強さに差がありすぎなんだよなぁ」

　まだ、胃がキリキリしているのか。

　彼女の強さを再び見て、お腹が痛くなる。頭もズキズキするし。

　...寝るか。

　side:セルリアス

「最後の方は説明できなくてすまないね。それじゃあ、説明のために一旦教室に戻ろうか」

　その先生の一言でぞろぞろとこの闘技場から出ていく。

　あまりにも強かった。

　両方とも強かった。

　なぜ、時間停止中に動けていたのかがわからない。

　それを考えながら教室に戻る。

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　・時魔術

　時間に関わる事象の魔術

　魔術によって空気中の魔力を時属性に傾かせることで成立する

　術式にはめっちゃスゲー図形たくさん

　術式にブレが生じると効果が薄くなったり、魔力をとても喰う

　・時間停止

　時魔術の一種

　慣性の法則やらその他諸々で発動しただけで死ぬことはおそらくない

　基本的には発動したら大半の奴らには勝てる

　大体は空間魔術と併用して使う。

　白黒テレビみたいな風景になる

　空気中の魔力を使った魔術が使えなくなる