第三十八話
彼はあの条件で無事承諾してくれた。
それに生徒達にも見せて良いとはね。
ま、見せることも条件に入れたからだけど。
いやー、よかったよかった。
無事に生徒達に見せることができそうでよかった。
戦うのは午前中だし、授業の一環として出来そうだ。
ただ、圧倒的トップ同士の戦いを見て理解できる程度のレベルには持ち込まないと、
価値がなくなる。
そのための前提知識が必要だ。
だから昨日教えると言った魔力操作を早くできるようになったもらいたいが...
「...それが魔力だ。色が付けたから見やすいだろう?どうだ、その魔力は?動いているか?止まっているか?...それじゃあ、動いている奴は魔力の塊が一定の場所で回っているか?それとも、身体全体に行き渡るように回っているか?」
と生徒に聞く。
生徒の反応は万別で悲しそうな顔をする生徒や当たり前とでも言うような生徒もいる。
そんな中、何人かの生徒が魔力を動かそうとする。
「今は無理に動かそうとするなよ。体が四散するぞ?」
そう、無理に動かそうとした生徒達に忠告をする。
「基本的に魔力を扱ってなかったら心臓に魔力は集まっている。例外もあるが。そして魔法を扱うことによってその場で回転し出す。だから大半の奴は回っていると思う。ま、安心して、全員が魔力を扱えるようにするから。そして魔力を扱う第一歩は魔法を使うこと、かな」
魔力操作のさわりができたらからいいか。
「それで話は変わるけど六日後戦うことになってね。休みか、観るか、どっちが良いかな?」
聞くまでもなさそうだけど。
「多数決で決まるから手挙げて。休みたい人。
観たい人」
全員が観たい、か。そうでもなさそうなのが一人いるけど。
「戦いを観てもらうことになったわけだけど、正直、今の君達だと私が何を考えて戦っているかとかわからないと思う。だから、戦うまでで考え方を少し身につけて貰おうと思う。戦う時も解説はするけど。自分で理解した時が一番納得感が強いからね」
まず見えないと思うけど。
「あまりわからないと思うけど、例えば攻撃する時、相手には大きく二つの選択肢がある。避ける、受ける、というね。ただ、避ける選択肢だけでも無数に選択肢がある。前後左右、上下さらには斜めに避けるかもしれない。受ける方にも同じで受け流すかもしれないし、受け止めるかもしれない。相手にはこんな感じの選択肢がある中、予測して動くのは難しい。だから攻める側は選択肢を狭めるように動く。剣を横薙ぎ振った場合、真横への回避や前への回避の可能性は限りなく低くなる、だからもう一歩詰める。といった感じでね」
そろそろ時間か。
「ま、君達にとって上位の戦いを観ることになったんだ。楽しく観ることも重要だけど、戦いの中で起こった出来事を一つでも真似できたら面白いと思わないかい?」
この発言に半分くらいは頷いてくれている。
「なら、その行動の原理を理解をした方がいい。さて、今日はここまでだ。さ、帰った帰った」
残りの六日間は順調に進んだ。
一日目は近接戦闘について
「……重要なのは常に流れを自分の手の内に収めておくこと。だから、……」
二日目は魔法について
「……魔法で生み出した現象は自然法則に従う。ただ、ただその現象の発生までは魔法法則に従う。つまり想像するだけで使える。つまり、……」
三日目は魔術について
「……魔術は自然法則が効かない。だから術式を正確に作らないといけない。1+1が2であるように。魔術も過程と結論がイコールになるように。ただ結論が同じでも過程が違うことがある。3−1とかね。魔術で言う……」
四日目も魔術について
「……魔術の陣は圧縮することができる。それと重ねることができる。威力を上げたり、魔法のように見せたりできる。他にも応用があるけど……」
五日目は近接戦闘と魔法・魔術について
「……組み合わせると戦いやすくなる。両方がある程度使えるなら近接主体で戦った方がいい。……」
六日目は闘技場に行く前に学園の訓練場に生徒を集める。
「訓練場に集まってもらったのは戦いが見えない可能性があるからその調整のためだね。動きが見えたら手を挙げて」
そう言って自分のできる最速のスピードで袈裟斬りをする。
...誰も見えなかったらしい。
空間魔術と時魔術の複合魔術を使う。
これで私が最速で振っても生徒達には少し遅く見えるだろう。
もう一度刀を袈裟斬りに振る。
これだと三人か。
複合魔術を操作してもっと遅くする。
そして刀を振る。
これを全生徒が手を挙げるまで繰り返す。
「...よし、これで全員が見えるようになったね。それじゃあ、闘技場に行こうか」
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