第二十九話

 これはある時期、数年の話。

 魔術を学ぶために図書館に行った話。









 ユキはアマに図書館に行きたいと伝え、連れて行ってもらう。


 アマに図書館内での魔力操作をしないように釘を刺され、図書館に着く。

 図書館に着いてからは魔術の所で本を読む。

 もちろん魔術の本を読んでいる。

 陣の形を覚えようとしているようだ。

 それは四属性の魔術も含まれている上、他の種類の魔法も読んでいる。

 そんな中、知識神がユキの隣に来る。


「...ユキは本は好き?」

 と聞かれる。

「はい。好きです」

 そう言いながら、魔導書を閉じる。

「そっか。それなら少し話そう、ね」

 ユキが本を置き、知識神を見つめる。


「なんで本が好きなの?」

 そう問われる。

 ユキは少し間をおいて言う。

「そうですね。やっぱり知識を得られるからですかね」

 そう答える。

「なるほどねぇ。やっぱりそっか」

 思っていた回答を得られたのか納得したような言葉をこぼす。

「でもね、私はそうは思わない。そうかもしれないけどそれだけじゃないと思うんだ。例えば、物語。物語はさ、知識はほとんど得られないし、その知識は浅いことが多いけど、主人公や敵役の考えを知ることができるんだ。これも知識と言われたらおしまいだけど、そうじゃないの」

 知識神は本を持ちながら話している。


「考えというのは意志で、精神で、他人に理解されない可能性がある物。同じ経験をしても変わる物。そして本来、知ることができない物。それを知識として落とし込めるって素晴らしいのよ」

 眼をキラキラさせて語る。


 そして、ユキが読んでいた魔導書を取り、

「それで言ったらこれもそう。あの指南書も、あの薬草本も、歴史書も、世界地図も、そして物語もそう。全て考え。ひいては経験。...でも、これはひとつの例えであって他にも知識に含められない物がたくさんあるわ。それを本は教えてくれる。本って最高でしょ」

 少年少女のような眼で話す。

「...そうかも知れないですね。でも、私は言っていたことの半分も分からなかったですが」

 そうユキは話す。

 それを聞いて知識神はフフッと笑い

「それでいいの。これで変わったら良くないわ。これは私の考えでこれまで経験したことだから。ただ、少し知って欲しかったの。これが経験になるから」

 持っていた魔導書を置きながら話す。


「話は変わるんですが知識神様は殺しについてどう思いますか?」


「ティスでいいわ。そうねぇ。私の考えは悪いと思うわ。考えを一番否定する行為だと思っているからね。本来ならね。でも、無理に近い。自分の考えを守るには相手の考えを否定しないといけない。だから難しいのよ。もちろん、魔物は別よ。あれは意志なき意志だからね」

 と言って、席を立ち上がり

「困ったなら、行き詰まっなたら、本を読みなさい。客観的に見る材料をくれるわ。それじゃあね」

 知識神はそう言って図書館から立ち去る。


 ユキは魔導書を取ろうとするが

「悩んでそーだね」

 アマがユキの前に現れる。

 ユキは取ろうとした手を引っ込めて話す。

「どうして分かるんですか?」

 ユキは怪訝そうに首を傾げる。

「どうしてだろうねぇ」

 笑いながらユキを見つめる。

 ただ、その目には有無を言わさない覇気がある。

「話してみたら?」

 とアマが笑みを保ったまま呟く。

 ユキはその言葉に導かれるように話す。

「...不安なんです。最初は楽しかったはずなのにこれがもしかしたら夢かもしれないという不安が付き纏ってくるんです。夢であっても偽であっても続けるべきなはずなんですが」

 ポツポツ言葉を紡いでいく。

「そっかぁ。でも、貴方は死んだし、これは現実だよ。でも証明する方法はないし、たとえ証明した所で貴方は納得しないでしょ?だから続けるしかないの。頑張りなさいな」

 そう言ってアマは消える。

 答えは聞けなかったユキだが、その顔は少し明るくなったように見える。


 少しした後に魔導書を読み始める。









 バイバイって言いたいけど忙しくなってきたんだ。だから見れそうにないや。少ししたらまた見れるようになるからさ。少し待ってて。それじゃあ長いサヨナラになるから。


 ⭐︎ーーーーー

 修行編が一旦終わりです。

 次回からユキ視点に戻ります。

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