第二十四話

 side:Sランク(モンス・コセン)


「それで動けなかったと」

 僕は今、本部ギルド長に魔物の侵攻の結果を説明していた、はずなんだけどなー。

「はい」

 いつの間にか、ユキさんの話になっているし。

 しかも、名前を知ったのがこの場っていうネ。

「ちなみにSランク第八位常識人のモンス・コセンからはどう見えた。嘘偽りなく答えてくれたまえ」

 ハハ、そんな風に聞かれたらしっかり答えないといけないじゃないか。


「分かりました。まず、私が抱いた第一印象は違和感です。緊急依頼に参加する者の多くはCランク以上です。そして、Cランクになる頃には大体の人が集まり、仲間を作ります。ただ、彼女は孤立していた。いえ、自ら孤立へ向かっているように感じました」

「それはSランクに良くある特徴だ。いいね。人物像が少しずつ見えてきた」

「次はゴブリンキングでの戦闘です。まず、私一人で戦っていました。そこに参戦してもらいました。大部分は先程話しましたので省略させていただきます。ここで私が思ったことは服に付いた謎の傷と魔法?に対する畏怖でしょうか。もしくは彼女に対する畏怖でしょうか」

「Sランクの君がかい?」

「そうですね。それも含めて話します。まず謎の傷ですが、外套の下の服の胸辺りが破け、血が付いていました。ただ、傷はありませんでした。次におそらく魔法である攻撃です。これも先程説明した通り風魔法だと思いますが私には良く分かりませんでした。ただ、死体が瞬間移動したので風魔法以外で殺した可能性も十分にあります。この二つの分からないが私の感じる恐怖の根本となっていると思います。最後に謎の人物との戦いですが彼女がその人物を刺したということ以外分かりませんでした。ただ、刺された傷は元通りになっていました。ここでより彼女に恐怖を感じたのだと思います。以上です」


「うん、ありがとう。彼女が見えてきたような気がするよ。ちなみにコセン君が彼女と戦ったら勝てるのかな?」

 あれだけなら僕も勝てるはずだけど

「俺なら勝てる、って言いたいけど難しいでし

 ょうねー」

「それじゃあ、僕なら勝てるのかな?」

「分からない。どっちとものユニークスキルを知らないのでどうしようもないですねー」

「分かった。魔物の侵攻についての質疑応答はこれで終わりだ。退出してくれて構わないよ」

 半分はユキさんだったけどね。

「それでは失礼します」




 side:本部ギルド長


 彼が退出した後に思案する。

 彼女をSランクに上げるか、Aランクにするか。

 ギルドの貢献度ではBランク程度だろうけどゴブリンキングを倒せるヤツがBで留まるのはいけない。

 それに他のBやAが彼女のように思われては困る。

 ただ、Sになるには今Sランクの三人からの推薦が必要なんだよね。

 一人は僕でいい、もう一人はコセン君で大丈夫だろう。最後は誰にしようか。


 ...賢者でいいかな。

 彼女、おそらく魔術使っているだろうし。

 そこで僕もSランクに相応しいか見よう。


 賢者もといハキムの家に行く準備しながらユキが冒険者登録の時に記入した紙を見る。

「君は何だ。急に現れ、頭角を現し、ゴブリンキングを倒せるほどの実力を持っている。でも情報は隠す。武器は刀と書きながら魔法も魔術も使える。本当に君は誰なんだ?」

 ただの強者か?あるいは辺境に住み、今まで表に現れなかった物好きか?それとも...



 side:ユキ


 魔物の侵攻は阻止することができたらしい。

 ただ、死傷者も勿論出た。

 もしかしたら私がその場に居たら救えたのかもという罪悪感を少し抱く。

 救える命があるなら救いたいよね。

 まぁ、私の邪魔にならない人に限るけどね


 ただ、私は赤の他人を助けられるほど強いのだろうか。

 地に触れかけている命を掴めるほど傲慢だろうか。

 ...分からない。

 何故、自分がこんなことを考えているのか。

 何故、赤の他人が死ぬことが嫌なのか。


 ...もしかして人間が好きなのか?

 いや、そんなわけ無いはず...

 私は人を信用も信頼もしてないんだ。

 そんな事無いはず、とは言い切れないよな。

 人を信頼してなかったら背後から刺される事も無いし、信用してなかったら呼ばれてもノコノコと現れなかったはずだ。

 自分の意識とは全然違う事をしてるなんて


 完璧には程遠いなぁ。

 できない事の方が多いのに出来ることすら完璧に手が届かない。

 神様達ですら完璧では無いのに神になれていない私が掴もうとするのは不可能か。

 ただ、神になれば完璧に近づけるはず。

 まだ先は長い、少しずつでもいいから完璧に近づこう。




















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