第二十三話

 消えてもらいたいがどうやって殺すか。

 ...簡単に殺せるこれでいいか。

「敵から離れてください」

 とSランクに伝える。

 ただ、思った以上に離れて戦っていたみたいだ。

 既に離脱している。


 なら早く殺してしまおう。

 空間魔術によってゴブリンキングを固定する。

 さらに空間魔術で首から上と下半身を転移させ、三分する。

 ゴブリンキングの体は力尽きたように倒れる。

 そして、切断面から血が流れる。

 生き返られては困るのでアイテムボックスの中に突っ込む。

 勿論、血が流れないように切断面を焼いてね。


「えげつないなー。一瞬やないか。俺いらんのちゃうか?」

「いえ、敵を引き付けていただいたお陰で隙ができたので」

「そうかー、それなら俺も頑張った甲斐があったなー。それとバラした死体の一つ欲しいんやけど貰えるー?」

「分かりました」

 そう言葉を返し、下半身部分を渡す。

 Sランクは死体に触れると砂のように崩れていく。

「っし、これで生き返っても大丈夫やろ」


 こんなやり取りをしている途中に聞く。

「貴方は誰ですか?」

「?...俺の名前はコ...

「貴方ではありません。私達をずっと見ている貴方に言っているんです」

 私が問いかけていた人物は観念したのか私達の前に現れて来る。


「...素晴らしい....とても素晴らしい。ゴブリンキングを倒すだけでなく、私にまで気付くとは。先程までボコボコにされていたのが嘘のようではありませんか」

 拍手をしながら芝居がかった口調で現れる。


 コイツか...

 ...コイツは六人のうちの一人だ。

 空間魔術を使い、空間を固定し逃げられないようにしておく。

 これで外部からの妨害も受けないだろう。


「我々の仲間になりませんか。貴方がいれば何でもできるようになるでしょう」

「それで?私のメリットは?」

「何でもできるようになるでしょう。

「だから、私のメリットは?」

「...は?」

「だから、それは君らのメリットであって私のメリットではないでしょ」

「...そうですが、」

「なら具体的に述べてよ。私のメリットを」

「...世界で一番になることができるでしょう」

「メリットらしいメリットは無さそうだね。それには乗らないでおくよ。それに殺されかけた奴の仲間になるっておかしいでしょ?」

「そうですか。それなら私は去るとしましょうか」

 空間魔術で転移を図っているが失敗に終わる。


「いえ、逃しませんよ。殺そうとしたのに自分は殺されないとでも思っているのですか?楽観的ですねぇ。ただ、私は優しいので逃げなければ半殺しでやめてあげましょう」

 刀を抜きながら話す。

「なぜ、どうして」

「転移が発動しないことかな?それとも脳に向かってくる魔力のことかな?他には、あそこにいる仲間らしき人物かな?」

 と言い、彼の後ろの方を指す。

 自分でも楽しそうな声が出ていることがわかる。

「安心しなよ、彼女には手を出さないからさ」

 固定された空間内に入ろうとしている女性が目に入る。

 バレていないと思っていそうだ。


 コイツは動揺しているのか魔術も打てなくなっている。

 その動揺のせいか途中から尻餅をつく。

 そんなコイツの胸に目掛けて刀を刺す。

 直前で気絶したのか声を上げることはなかった。

 刀をコイツの体から抜き、生命魔術の中で蘇生効果のある種類を使用する。

 ただ、傷は残しておく。

 死ぬ可能性をゼロにした後、空間の固定を解除して、この場を離れる。


 この光景を横で見ていたSランクのコセンはこう語る。

「彼女、やばい、本当に。彼が来るまでは俺より強い美少女だったで済んだんだけどさ。彼が来てからは獲物を見つけた肉食獣のような眼だったんだよね。そりゃあ動けないよね」








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