第二十二話

 Sランクの下に行くと愚痴を吐かれる。

「早く来てくれよー。結構辛いんだよー、攻撃が意味を成さないしさー」

 と間延びした話し方で話しかけてくる。

 そして、攻撃が激しかったのか所々で木や草が枯れているのが目に入る。

「すみません、余裕そうに見えたので見ていました」

 と素直に話しておく。


 こんな会話している間にも魔法が飛んでくる。

 大半はSランクが消してくれるが消えなかった物がこちらに飛んでくる。

 ただ、数は少ないのでしっかり避ける。

「すまんな。そっちまでスキルが届かんかったー」

「いえ、このくらいは」

「頼もしいねー。これなら時間稼ぎも任せられるなー」

「何秒ほど時間を稼いだらいいのでしょうか?」

「ホンマ、話が早くて助かるー。大体、四十秒ほどや。後は任せたで」

 この会話が終わるとSランクは魔法を消すのをやめ、集中して立っている。


 だが、魔法は喰らわないようにしているだろう。

 ただ、一応Sランクの周りを魔力で隔てておく。


 ゴブリンキングの前に立つ。

 このゴブリンはあのゴブリンよりも遥かに大きい。ざっくり三メートルほどだ。

 があのゴブリンより圧を感じない。

 魔法でしか攻撃していないことも含まれているだろうけど。

 だが、それを含めても圧を感じないのはおかしい。

 魔力にも違和感はなく、ただ少なく感じるだけだ。


 後は、敵が前後にいることぐらいかな。

 近づいてくる奴だけを殺せばいいだろう。

 今の所、近づく様子もないから放置でいいか。


 ...魔法が飛んでくる以外で動きはなく、その魔法も意味を成さない。

 ただ時間だけが過ぎていく。


 ..ゴンッ

 と壁にぶつかった音が聞こえる。

「イッター。...おーい、これ取っ払ってーや」

 魔力の隔たりがあるせいか小さい声が響く。

「分かりました」

 と答え、魔力を消す。


「ありがとーな。それじゃ後ろに下がっといてくれ」

 Sランクが敵に触れる。


「...内側から崩れて消え去れ」

 そう言葉を発するが何も起きない。

 Sランクも違和感に気づいたのかゴブリンキングから離れる。

「あれ?なんで消えないんだ?」


 なるほど。想定外という訳だ。

「何をしたかったんですか?」

「精神を消したかったんよー」

 残念そうな声で答える。

「俺のユニークスキルはなんも聞かなかったし策もないし、お手上げやわ」

「でしたら、次は私の番でよろしいでしょうか?」

「もちろん。なんか手伝った方がいいか?」

「では、前で敵の注意を引いて下さい」

「おっしゃ、任せろ」


 とりあえず、魔法しか打っていないのはおかしいな。

 闇魔術で敵の体のコントロールを図る。

 ...無理か。

 なら、精神のコントロールを。

 ....これも駄目と。

 二つとも奪えるには奪えたがすぐ取り戻されると言ったところか。

 ただ、何故、顔に出ない。

 何故、無表情のままでいれるんだ?


 ...ふむ、魔法を当ててみるか。

 火の矢を顔を狙う。

 避けるそぶりを見せず当たる。

 そのまま燃え続けている。

 やはりと言うべきか。


 操られている可能性があるな。


 まぁいい、さっさと消えてもらおう。












































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