第38話
――…彼に、接触をはかった夜から二週間。
こうして彼の帰りを待っていること自体、奇跡だと思っている。
最初こそ少女を受け入れまいとしていた彼だったが、しかし、どんな心境の変化か、二日目以降は何も言わずに食事と寝床を提供してくれている。不思議だな、と思う。いきなり押しかけたあげく、彼の都合など考えなしに居座ったのは自分なのに、こんなふうに自分以外の匂いが満ちた部屋で息をするという状況はいくら夜を重ねても慣れることはない。
彼は、どんなふうに感じているのだろう。
何を思って、自分を部屋に置いてくれているのだろう。
二週間、一緒に暮らしてみて分かったことがある。彼は几帳面で細かいことを気にしそうなわりに、酷く面倒くさがり屋で大雑把だっていうこと。時間を割いてまで頭を悩ませるのも億劫なのか、自分のことまで部屋に置いてしまう始末だ。いろんな意味で大丈夫なんだろうか、と、彼の性格を案じてしまう。
降りしきる雨にいつかの夜を重ねていると、腕に抱いた猫が「にゃあ」と身じろいだ。尖った鼻先を胸に埋め、小さく丸まった背中が腕の中へ潜ろうとする。もう眠いのだろうか。何気なく猫を見ると、大きな雨粒が窓を叩いた。胸に、震えた吐息がそっと触れる。
「…そっか。怖かったんだね」
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