第37話
「帰って来ないね?」
返事は、ない。
少女は捲ったカーテンを下ろすと、足元で小首を傾げている猫に微笑みを向けた。下ろしたカーテンの向こうでは空が泣いている。今から一時間程前に降り出した雨は弱まるどころか強まる一方で。窓を閉めていてもザァザァと力強い雨音が聞こえてくる。
少女はその場に腰を下ろして腕を広げた。すぐにピンと耳を立てた猫が飛びついてくる。潰さないように慎重に抱いて立ち上がると、腕に収まった猫は「みゃあ」と嬉しそうに鳴いた。
少女は柔らかな毛並みにそっと指を通す。お気に入りの場所を擽ってやると、猫は安心しきった顔でその身を丸めた。
「大丈夫だよ。すぐに帰ってくるから」
ゴロゴロと擽った喉が鳴る。可愛い。そう思って、もう一度窓の外へ目を向けるが、自身の表情が硬いことに少女は気づいていた。猫には『すぐに帰ってくるから』と笑みを向けたが、外から聞こえてくるのは冷たい雨音だけだ。
彼は、こんな雨の中を帰ってくるのだろうか。
帰って来られるのだろうか。
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