第33話

「美味しいよ?」




フォークに絡めたラーメンを口に運びながら言う。彼女はそんな僕を黙って見ていたが、やがて握らせたフォークに目線を移すと、恐る恐るといった様子でフォークにラーメンを絡ませた。


まぁるく巻かれたラーメンから乳白色の湯気が立つ。僕が言ったことを覚えていたのか、彼女はその湯気をフーフーと飛ばしてから口元へ運んだ。リビングには静かな間が生まれ、僕は「美味しい?」探るように問う。彼女は小さな器を前にほぅ…っと息を漏らした。




「おいしい…」


「そ、よかった」




返された言葉にフッと目を細める。表情は相変わらずだったが、恍惚とした声は嘘を言っているようには思えなかった。


ラーメンを食べたことがないなんて珍しいね?と言いかけ、やっぱり止めた。さっきみたいに無知を知らしめるのは本意ではない。彼女のフォークが二口目を絡ませようとしているのを見届け、僕も腹を満たすことに集中する。


どうやら初めてらしいラーメンは完食だった。僕がフォークを置いて「ごちそうさまでした」と手を合わせれば、彼女も見よう見まねで「ごちそうさまでした」と手を合わせた。冷めているわりに素直な一面には好感が持て、もしかして口数が少ないのはこの子の個性なんじゃないかと、そう思えば、噛み合わない会話にも多少の許容は出来る。

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