第29話

「ごめん。インスタントラーメンでもいい?」




早々に鮭を諦めた僕は冷蔵庫を閉めた。ちょうどキャットフードを取り分けていた彼女が「…らーめん?」と首を傾げる。ご飯を炊くのに時間がかかりそうなことを告げれば、彼女は「大丈夫です」と頷いた。


鍋に水を張って火にかける。確か、買い置きしてあったインスタントラーメンが残っていたはずだ。備え付けの小さなパントリーからインスタントラーメンの袋を出すと、キャットフードを出し終えたらしい彼女がいそいそとキッチンへ入ってきた。




「何か、他に手伝うことはありますか」


「え?あー…そうだなぁ」




意外にも気は回るらしい。他人の部屋に居座るという暴挙に出ながらも、彼女は手伝いを申し出た。断る道理もなかったので、食器棚から箸と器を出すように告げる。彼女は「分かった」と頷き、僕の隣に立った。煮立った鍋の中ではほぐれたラーメンが踊っている。




「これでいいですか?」


「うん、いいよ。あとは器にスープの素を入れといてくれる?」


「スープの素…?」


「袋の下とかにないかな?銀色の袋のやつ」


「これですか…?」


「うん、それ」

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