第27話
「小夜」
何度タメ息を吐いたか分からない。諦めに背中を押された僕は廊下へと踵を返す。リビングから小夜の名前を呼んで顔を出せば、小夜を宥めるようにしゃがみ込んだ彼女がハッと顔を持ち上げた。
僕を映す双眸はやはり戸惑っていて。人間以外には思いのほか感情を見せるのかもしれないな、と、彼女のコミュニケーション能力に対して早々に諦めを抱く。
「君ももういいよ。そこじゃ他の住人に聞こえるかもしれないから、小夜のことこっちに連れてきて」
古いアパートだ。壁の厚みなどたかが知れている。僕は廊下の壁に凭れ、リビングへ目線を投げた。すると彼女も何を言わんとしているのか察したのだろう。足元から離れようとしない小夜をそっと抱き上げた彼女は、恐る恐るといった様子で僕の正面に立った。そしておずおずと抱いた小夜を差し出してくる。
「君も」
僕は小夜を受け取る代わりにリビングを顎でしゃくった。意味を理解したらしい彼女がわずかに目を大きくさせる。その分かりずらい変化に肩を竦めた僕はリビングへ足を向けた。背後から控えめな足音が聞こえ、ドアの閉まった音が追いかけてくる。
「君、なんか食べた?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます