第26話
怯えることしか知らなかった小夜に垣間見た野生。小夜は今、本能で世界を見ている。知らなかった一面に思わず息を呑めば、獰猛な獣のように背中を反らした小夜が勢いよくソファから飛び下りた。
全身の筋肉を上手に使い、しなやかに僕の横を駆け抜けていく。
「…っ、小夜!?」
夜なのも忘れて声を上げる。とっさに駆けて行ったほうを見れば、小夜の姿はもう見えなかった。玄関のほうから「…小夜?」と、彼女の戸惑う声が聞こえる。僕は立ち尽くしたまま呆気にとられ、やがて状況を理解した末に大きくタメ息を吐いた。
――…随分と心を奪ってくれたものだ。僕にさえ遠慮していた小夜が初めて意思を見せた瞬間だった。瞳孔の開いた瞳に強さを宿し、なぜ追い出すのかと、駆けていく背中に責められた気がした。
僕は肩を落としながらまたタメ息を吐く。追いかけてきた小夜に驚いたらしい彼女が「どうしたの…?」と、小夜を宥め、引き留めるかのように小夜が鳴く。まるで悪者にでもされたかのような気分に覚えたのは怒りではなく、諦めだった。仕方がないと思うくらいには、僕は小夜のことを可愛がっているのだ。
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