第23話
少女はそういえば、と、猫を撫でながら辺りを見渡した。静けさの中に人の気配は感じない。ただ、光に溢れた部屋は暖かかった。日射しが差し込んでいるのを見ると、雨が止んだのだろう。少女は眠りの淵に落っこちそうな猫を胸に抱き、窓のほうへ歩みを寄せた。
隔たるカーテンをそっと避け、わずかに身を乗り出して空を見上げる。曇天を覆っていた雲は嘘のように捌け、澄んだ空には目の覚めるような青が広がっている。
止んでる、と、心の中で呟いた。
カーテンを下ろしてソファへ戻ろうとすると、何気なくテーブルへ意識が向いた。そこに置かれているのは一枚の紙。きっとこの部屋の主は綺麗好きなのだろう。きちんと整頓された部屋の中で、テーブルの上に置き去りにされた紙だけが不自然だった。
「……、」
少女は何気なく手を伸ばす。
そこには癖のない文字で、
【鍵はポストの中に入れてって】
とだけ綴られていた。よく見れば、書置きと一緒に部屋の鍵が添えられていた。暖かな日射しの中でくすんだ銀色が鈍く光る。少女は鍵を手に寝室を見つめた。昨夜、少女を招いてくれた家主が眠りについた場所だ。書置きをしたってことは、すでにこの部屋にいないのだろう。
鍵は、ポスト。少女は綴られた文字に目を向ける。つまり、鍵を閉めて出て行けっていうこと。ポストは家主にしか開けられない。鍵を返してしまえば、関係が断たれてしまう。
書置きには家主の希望が綴られていた。
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