第20話

「小夜にも見せてあげればよかった」




寒さに震えていたあの猫に。


縋ることを諦めたあの猫に。


生まれながらの孤独を背負い、愛されることも知らないまま息絶えようとしていたあの猫に――…


暗くないよ。大丈夫だよ。ほら、雲の切れ間からは月が見えるかもしれないよ?だから、ねぇ、顔を上げてみなよ?そんな温かな言葉で抱き締めてやっていれば、小夜の記憶も少しは優しいモノになっていただろうか。


僕は堅苦しいネクタイとスーツを脱ぎ捨ててからベッドの上に寝転んだ。寝転んで、状況を理解するのも億劫で目を閉じた。仕事帰りで疲れていたのもある。こんな日は何も考えずに眠りたい。


それでも、まぁ、カーテンを下ろすことはしなかった。


目を閉じても、瞼の裏側には藍い空が描かれる。


たまにはこんな日もいいか、と、夜空を思えば、いつしか僕の意識は深い群青の世界へと沈んでいった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る