第120話

「平助、何かありましたか?」



一礼してから道場を出て来た彼に、山南は手拭いを渡しながら、唐突に問い掛けた。



「え?何がっすか?」



顔では平然を装いながら、手拭いを受け取る手はピクリと反応する。



素直すぎるのは、彼の長所であり、短所でもある。



「ふふ、隠しきれていませんよ。」



「…山南さんには叶わないっすね。」



あはは、と笑いながら彼は近くの階段に座り込む。



「僕には直接関係無いんですが、少し気がかりなことがあって。…新八さんの事っす。」



「永倉くん?」



「はい。」



そう言って、再び黙り込む藤堂。



その様子を見つめて、山南はふわりと笑った。



「何か、聞いてしまいましたか?」



「え!?」



鎌をかけたつもりだったが、予想通りの反応だ。



彼の言う”気がかりなこと”の内容を、あらかた把握した山南に、藤堂はおずおずとその顔を覗き込む。



「や、やっぱり山南さんも…?」



「いいえ、僕は何も。そんな噂を聞いただけですから。」



「そうすっか…。」



安心したように、藤堂はほっと一息ついた。



が、やはり不安そうな表情に戻って山南を見上げる。

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