第116話

「新八ー、呑むぞー。」



スパンッと襖を開けた彼の第一声はそれだった。



「…当たり前のように入ってんじゃねえよ。」



ずかずかと部屋に入り込んで来た原田に、思わず溜息が漏れる。



よくよく見れば、その手には徳利が握られていた。



恐らく、台所から勝手に持ち出した酒だろう。



「そんなこと言わずにさー。見てみろよ、月が出てる。」



「だから?」



「釣れねえなぁ。月でも肴にして呑もうぜ!」



「ったく。呑みてえだけだろうが。」



「ハハッ、違えねえ!」



そう言いながら、部屋の外へ出てみると、確かに綺麗な月夜だ。



リリリ…と聞こえる虫の声に、もうそんな季節なのか、と気づかされる。



「ま、たまにはいいだろ。月見酒。」



「左之助が、こんな風情のある事するとはな。明日は槍でも降るのか?」



「俺は雪がいいかなー。」



「誰も、そんなこたぁ聞いてねえよ馬鹿。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る