第109話

『その犯人を、会津藩藩主が探しているようなのだ。』



『松平容保公が、か?』



『まだ公にそのような命は下っていないが、水面下でその動きが見られるようだ。』




蝶を、松平容保が探している。



何とも信じ難い事実であったが、嘘では無いだろう。



忍びの間では、公に晒される前の物事の情報が行き交う事は日常茶飯事。



しかも、山崎の張った網はかなり信頼の置ける忍びが集まっており、その信憑性も高い。



故に、これまで流れてきたその情報を疑った事は無かったし、違った事も無かった。



しかし、これが事実とするなら、松平容保は何故彼女を探しているのか。



何故、彼女は探される身となったのか。



彼女は、何を隠しているのか…。



「…あー、ややこし。」



もしも、彼女と会津藩に何らかの関係があるのなら…これは、土方に報告しなくてはいけない。



「…せやけど。」



山崎には、もう一つだけ思うところがあった。



いや、正確に言えばただの勘なのだが。


こんな仕事を生業としているせいか、彼の勘は気味が悪いほどよく当たる。



今回も、それを信じるとしたなら…?



「あー!!やめやめ!!」



こんがらがった脳内を振り払うように大きな声を出せば、庭先からバタバタと鳥の飛び立つ音が聞こえてきた。




…まずは、手掛かりでも探そっかなぁ。


なんて思いながら、かれは散らかった部屋の片付けに取り掛かった。

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