第104話

部屋を出てから、斎藤は襖の前に座る。



正直に言えば、そこに留まるのには少し悩んだが、監視は隊務であると自分に言い聞かせた。



襖の向こうからは時折、鼻を啜るような音が聞こえてきたが、それ以外は静かに時が流れていた。



どれ程、そうしていただろう。



「…ねえ。」



少しだけ、うつらうつらとしていた斎藤に、小さく声が掛かった。



「起きてる?」



「…起きている。」



その声は、もう震えてはいなかった。



「これは独り言だ、気にしなくていいから…吐かせて。」



そう前置きをして、蝶はぽつりぽつりと言葉を並べ始めた。



「…今日、人をね、殺したんだ。」



「…。」



「敵を一人でも多く殺す為…確かにそれも立派な理由なんだろうね。でも今日は違う、今日は…自分が生きるためだけに、殺した。」

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