第101話

山崎の部屋を出て自室へ向かいながら、斎藤は四日前の事を再び思い返していた。



***



「俺は怪我人の手当に当たる。斎藤はん、そいつ頼むわ。」



「承知。」



屯所に着いた直後、その言葉だけを置いて、山崎は屯所の医務室へ急いだ。



疲れもあるであろうにも関わらず、その足は普段と変わらない俊敏さがある。



彼の背中を見送って、斎藤は蝶を抱え直すと、彼女の部屋へ向かった。



「…起きろ。」



低い声で目覚めを促すと、耳元で眠そうな欠伸が聞こえてくる。



「…すまない。ここまでありがとう。」



弱々しく謝る声に、斎藤は淡々と答えた。



「構わん。あまり動くな、傷に触る。」



「随分優しいね。」



「女の身だ、傷は残らないほうが良い。」



どんなに大人びていても、どんなに戦いに慣れていても、彼女はまだ幼さの残る女子なのだ。



この年頃だと、一般的には結婚している頃だろうが…。



何故、この娘がこのような武器を持つことになったのかは分からないが、それでも結婚をいずれはする身。



のはずだ、と斎藤は考えた。



「…女ってだけで、なんで差別されなくちゃいけないんだ。」

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