第91話

間に合わないーー。



咄嗟にそう思った。



キリは倒れた柱に足が挟まっていた。


身動きは取れない。



残された時間は、あと僅か。



どうする、どうすればいい…っ




「お願い…この子だけで良いから!!お願いやから!!」



泣きながら、勘助を蝶の元へ押し出そうとするキリ。



それにしがみつく勘助。



「お願い…っ!!」


「いや、姉ちゃん!!姉ちゃぁーん!!」










『お姉ちゃん!』










懐かしい、愛おしい”あの子”の笑顔が、目の前に見えた気がした。










…この二人を引き離すなんて、出来ない。



「な…にしてるん!?」



「いいか、抜け出す事だけを考えろ!分かったな!?」



もはや無意識だった。



蝶の腕は、その柱を持ち上げようとしていた。



「もう時間ない!早く、勘助だけでも!」



「っふざけるな!!」



無理かもしれない、なんて分かってる。



「家なら建て直せる!お金だってまた働けばいい!でもなっ」



それでも。


それでも、この二人は。



「命だけは、二度と還らないっ!!」




助けたい。

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