第88話

京は華やかな街だ。



少なくとも、蝶が知っている限りはそうだ。



人の営みが、幸せがある街。



そう、ある”はず”だったのに。



「…ひどい。」



目の前の光景に、蝶はぐっと奥歯を噛み締めた。




悲鳴の声が耳をつんざく。


押し寄せる人の波。



助けを呼ぶ声、泣き叫ぶ声、母親を探す子供の姿。



赤々と燃える炎、何かが焼ける臭い、炎に映る黒い影。




これが、これが本当に京なのか…?


どうして、こんな…



「…これが、長州のやり方か?」



人でなし。



そんな言葉が頭を過る。



「誰かぁぁぁぁ!誰か来てぇ!」



多くの悲鳴が響く中。



何処かで助けを呼ぶ声が、耳に入った。



反射的に、蝶の足はそちらへ向かっていた。

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