第81話
「山南くんが居てくれたら、なぁ?」
「…ちっ」
それを肯定する自分に苛立つように、土方は舌打ちした。
この戦には山南は参加していない。
少し前に左腕を負傷して以来、彼は刀を持ち戦線に立つことをしなくなった。
そして、もう一人…沖田総司もまた、この戦場には立っていない。
池田屋での一件の後から体調不良が続いていた彼は、土方に出動を禁止された。
が、やはり、そんな苦い命令を聞く筈もなく、一日中副長室で駄々を捏ね続けた沖田。
見兼ねた近藤が、がら空きの屯所を守るのはお前しかいないと諭してなければ、土方自身すら此処にいなかったかもしれない。
手練れの二人が不参加というのは、かなりの痛手。
この戦力不足が、蝶を戦に引っ張り出した理由の一つでもある。
「近藤さんっ此処は粗方片付いた。向こうを頼む!」
土方が顎で指したのは、此処より少し小高い丘の上。
血と土で滅茶苦茶になったその地にも、幾つもの浅葱色がひらりと舞っている。
「わかった!」
去り際に、近藤はまた一人の腹を掻っ捌くと、転がる死体を踏み越え駆け出した。
その背中を視界の端で捉えながら、土方は舌打ちする。
「…やっぱ、策士がいねえとやりづれえや。」
背中を預ける筈の”彼”がいないことを、己の空虚な背後が静かに語っていた。
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