第71話

***


まだ夜も明けぬ早朝。



眠らずに陣営の様子を眺めていた目が、僅かに揺れた。



…おかしい、なにかが違う。



暫く監視をしてきたが、初めて抱く違和感に自然と蝶の表情は険しくなっていく。



知ってる、この感覚。



陣営から感じられるぴりぴりとした空気、緊張感…確かな殺意。



どくん…っ



無意識に反応する体、脳裏に掠めた赤い残像。



「…っ」



「…小芝、報告行くで。」



息を呑んだ蝶の隣では、いつ起きたのか、山崎が目を鋭くさせていた。



静かに発せられた声は、昨夜のものとは違う。



それは、緊迫した今を悟るのには十分すぎた。



「分かった。」



そう言うが早いか、二人は同時に駆け出す。








二人の潜伏場所は伏見。



新撰組陣営の九条河原までは然程遠くない。



「俺は、他の連中に知らせてくる。小芝は副長に伝えてきぃ!」



「分かった!」



途中で山崎と分かれると、蝶は九条河原に向けて足を速める。



「土方さん…!」



目の前の夜は、まだ開けない。

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