弐
第70話
元治元年 六月 二十四日
出陣命令が下った新撰組は、長州勢力に備えて竹田街道の警備に当たり、彼らは会津藩と共に九条河原に布陣する。
一方、蝶と山崎は情報収集の為、長州の陣を探っていた。
「…」
「…動く気配は?」
そっと木陰から覗くと、多くの兵が蝶の目に入った。
此処は長州の陣地の側にある小高い山の上。
見下ろせばその全てが見えるという、見張りにはもってこいの場所だ。
「皆無。」
監視を始めてから、半月程が経つ。
長州勢は大きな動きこそ見せないが、日に日にその危うさを増していた。
帝に嘆願書を提出していながら、彼らは既に戦闘態勢に入っている。
嘆願書を受理されるとは、鼻から思っていないらしい。
「結局、嘆願書は見せかけのだったって訳かな。最初から武力行使でいくとは。」
「せやな。見てみい、いつ大砲打たれるか分かったもんやないわ。」
長州の陣地で一際目を引くのが、日の光を受けてギラリと黒く光る幾つもの大砲。
あれ一つで何十人もの人間を殺せる。
ずんぐりとした太い図体が、彼女の恐怖をより掻き立てた。
「…なんや、怖いんか。」
流石は監察方といった所か。
彼女の心のうちを読み取ったような問い掛けに、蝶は小さな声で呟く。
「当たり前だろう…」
「何や、えらい弱気やな。いつもの元気はどこ行った。」
「弱気なわけあるか、人殺しの道具は何だって怖い。」
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