第62話

「心配しなくても、私一人の情報を流したところで何の役にも立ちません。寧ろ、返り討ちにしてあげますよ。」



妙に納得できる言葉に、蝶は思わずほっと息を吐いた。



「江戸と言っても田舎の方でしたからね、こんな風景がよくあったんですよ。よく父が連れて行ってくれました。」



「へえ、お父様が。」



いつに無く、自らについてよく喋る沖田に、少し面食らいながらも、蝶は静かにその話を聞いていた。



川の側にしゃがみ込んで話す沖田は、少し幼く見えた。



「蝶さんの故郷はどんな所ですか?」



「…。」



不意に口をつぐむ蝶。



それを見ていた沖田は、川の水で遊びながら質問を変える。



「じゃあ、ご家族は?」



「家族は…妹が、一人。」



「へえ、意外です。」



「綺麗な子なんだ。優しくて、気立てが良くて、真面目で…私の自慢だった。」



ふわり、と吹いた風が肩に流れる髪を撫でていった。



懐かしむように目を伏せた蝶の言葉に、沖田は小さな疑問を抱く。



「…だった?」



「…。」



振り返る沖田から、蝶は目線を外す。



それを見た沖田は、何も言わずに再び川の水に手を伸ばす。



「それじゃ、お父様やお母様は?」

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