第60話

「蝶さん。」



「あ、ああ。沖田か。」



外を伺う蝶の背後から現れたのは、隊服に身を包んだ沖田だった。



二人が目が合った一瞬、彼の目がギラリと光ったのは気のせいだろうか。



「ちょっと、蝶さん?あなた何もしてないじゃないですかー。」



「何がだい?」



「顔を隠せるようにして下さいって言ったのに。」



「隠そうとするから怪しく見えるんだ。堂々としてる方が、怪しまれないだろう。」



あっけらかんと言う蝶に、沖田はブツブツと文句を言いだす。



「ただでさえ傷跡が目立つんですから。もう少し、気にして下さいよ馬鹿。」



「最近、君の口悪くなったような気がするんだけど。」



「気のせいじゃないですか?」



それは絶対に違うだろう。



と頭の中で盛大に突っ込みながら、二人は街へ歩き出した。



「何処にいくんです?」



「は?」



「…は?」



思わぬ返答に、オウム返しをする沖田。



一方、蝶はぽかんと口を開けている。



「何処か、行きたい所は…」



「…特に考えてなかったな。」



「…」



今度は、溜息をつく事も忘れてしまった。



「何処でもいい。君の好きな所教えてくれよ。」



「私の?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る