第58話

庭の前を歩いていたのは、立派な袴を着た近藤だった。



隊士達の挨拶に頷きながら歩く姿は、さすが局長と言ったところか、風格がある。



「…まーた、頭のかったいお偉いさん方と何処かに行くそうだ。」



蝶と同じように目で彼を負いながら、そんな事を零したのは永倉だ。



蝶が振り返ると、彼の顔には微かに皮肉めいたものが見える。



「…永倉さ」


「蝶さん。」



怪訝そうに眉をしかめた永倉に声をかけようとした彼女を遮ったのは、別の声。



声の主は、痺れをきらしたであろう沖田だった。



しかし、いつもの上辺の笑顔ではなく、どこと無く鋭い表情を浮かべている。



いや、鋭い目で永倉を見つめている。



「お。総司か。そういや、今日はお前の当番だったもんな!嬢ちゃんを宜しくな!」



「宜しくはしません。じゃ、行きましょうか。」



「あ、ああ。」



ほんの少しの疑問をその場に残して、蝶は半ば無理やりに沖田に連れられていった。



「はっ…気に喰わねえ。いきなり偉くなったような顔しやがって。」



「落ち着けって。ほら、稽古行くぞー!」



永倉もまた、原田に宥められながら、その場を立ち去ったのだった。

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