第56話

「出られるの?」



「引き篭もってばかりで体を悪くしたらいけないからね。誰かと一緒なら良いですよ。」



「!!」



山南の言葉に、蝶は一瞬にして目を輝かせた。



まさか外出出来るとは思っていなかった。



顔を輝かせた、それまで見たことのない素直な表情に山南は少し驚いたが、何事も無かったかのように、また笑う。



「今日の巡察は…確か、総司だったかな。」



「じゃあ、沖田と行けばいい?」



「ええ、後で話しておきますよ。」



ちゃんと食べてくださいね、と蝶の止まっていた箸を進めるよう促して、山南は部屋を出ていった。



「…」



一人になってから、蝶は先程の反応をやや照れ臭く思った。



…子供じゃないんだからなぁ。



とはいえ、喜びまでも抑えられるほど彼女は大人ではなかった。



相手が優しい山南だったという事もある。



蝶はその事はもう何も考えないようにして、次の思考へと移る。



「…沖田かあ。」



あの意地の悪い笑顔を思い浮かべ、蝶は少しだけ苦笑いした。

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