第51話

「それよりも、私は君が忍びだったって事に驚いたな。全く分からなかった。」



「表向きは医者やし、医者に見えんかったら意味ないわ。まあ、俺天才やからなぁ。」



「へーーーーーー、ふーーーーん。」



「適当に流すな。」



そんな他愛もない話をしていると、不意に山崎の目がある一点で止まった。



「…それも、あんたの?」



山崎が指さしたのは、蝶の道具が入っている行李。



ちらりとだけ見えた、一本の苦無だった。



「うん。」



「えらい上等なもんやな。何処で手に入れたん?」



「知人に貰った。」



「へえ」



渡されたそれを、山崎はしげしげと眺めている。



「綺麗やなぁ。ちゃんと使うてやりや。」



「そのうちな。ところで、山崎さん。」



「うん?」



彼女の苦無を離そうとしない山崎からそれを奪い返すと、蝶はそれを大事そうに仕舞う。



「君も随分、武器を持ってるみたいだけど。」



「此処に来てからは、ずっとやっとるさかい。」



「へえ」

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