囚われ

第39話

「入るでー。」



暖かい鍋と薬を両手に持ち、足で襖を開けながら、山崎が入ってきた。



「器用だね。」



「せやろ。」



そんな軽口を叩きながら体を起こすと、腕に巻かれた包帯が突っ張った。



「ったたた…」



「ちょっ、まだ起きたらあかんて!医者の言うことは聞くもんや阿呆。」



「これくらい大丈夫だ。それよりお腹減った。」



「ったく、治ったら覚えとけ。」




池田屋事件から七日が経った。



五日間食べていなかった上に、あれほどの激しい戦いを繰り広げた為、彼女の体は衰弱仕切っていた。



丸一日眠り続け、漸く目が覚めてから首と腕の傷をしっかり手当してもらった。



幸いにも両方の傷は軽いもので、暫く安静にしていれば問題ないらしい。



が、やはり体力を戻すのには時間が必要だった。



というわけで、蝶はずっと布団の上での生活となっている。



あの日、山南と会話をしていた山崎は実は隊医として働いているらしく、毎日こうして様子を見に来るのだ。



「ご馳走様でした。」



「ん。」



食べ終わったお粥の皿を片付け始める山崎の手は、要領がよく手馴れている。



口は悪くても、甲斐甲斐しく診てくれる彼は、いい医者なのだろうと想像出来た。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る