第30話

永倉も、もう何も言わなかった。



ただ、永倉の大きな舌打ちが、周りの声と金属音と共に、蝶の耳に入った。



「二階だ!総司がひとりでいる。」



「分かった。」



男の死を見届けると、蝶は血でぬるぬるとした床を駆け出した。



「此処は頼む。」



「ちょっ、待て!」



永倉の止める声は金属音にかき消され、永倉自身も襲ってくる者達の刀を受け止めた。



「っ、あいつ、刀持ってねえじゃねえか…!」



男に突き刺さったままの小太刀をちらりと見ながら、永倉は刀を跳ね除けた。



どうやって戦うつもりなんだ、あいつ…!



そんな心配を舌打ちと共に吐き捨て、永倉はまた一人、目の前の輩を倒す。



彼の背後でぐったりとした男を、平助を守るように。

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