第23話

「そうですか。…一つお聞きします。」



座っても尚、山南の目には力が篭っている。



「古高俊太郎をご存知ですか?」



「古高?知らない。」



「そうですか。彼は私達の敵であり、幕府の敵なのですが、少し前に新撰組が捕らえましてね。」



山南は蝶へ探るような視線を投げ続けている。



こうしてみると、やはり新撰組の隊士として蝶に疑いを掛けていたのだと思われた。



「拷問の末、今日の事を自白したんですよ。」



「今日の事?」



「あなたは知りませんか。」



「そもそも、その男は誰なんだい?」



蝶は男の名も、"今日の事"といわれるものも、聞いたことがなかった。



向かい合って座り、じっとしている二人は、側から見れば随分変わり者のように見えた。



じりじりと焼けるような視線が痛いが、此処で外せば、蝶の疑いは確実なものとなる。



蝶はじっと耐えた。



と、いきなり、山南はそれまでの厳しい視線を外して、にこりと笑った。

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