9. 裏切り

『…なぁ、アキ。頼みがあるんだ』



あの日は、騒がしいほどの雨音が部屋中に響いていた。外はバケツをひっくり返したような大雨で、窓ガラスには大きな雨粒が強風によって叩き付けられている。


深夜1時、アキは軽く酒の匂いを漂わせながら帰宅した。濡れた髪をバスタオルで乾かしながら椅子に腰を下ろし、俺を何事かと見上げている。


アキに頼ったのは、それが初めてだった。組織犯罪対策課に異動して、半年が経った頃だった。先輩達が躍起になって追いかけていた事件を、手助けしたかった一心だった。


依存性が強く、副作用も強い、バロッコと呼ばれる新種のドラッグ。それが若者の間で流行し、たった半年で5人の死者を出していた。金額は従来のドラッグに比べて安価で手に入り易く、法の目を掻い潜って合法と謳われ、一気に蔓延した。


だがその正体は、高い依存性と強い副作用がある殺人ドラッグで、じわじわと臓器をやられ、体の異変に気付いた頃には、臓器は既に使い物にならず、苦しみながら死に至るという悲惨なものだった。


そんなドラッグを作り出し、売り出した大元を捕まえようと組対連中は、毎日のようにチンピラや売人を捕まえては問い詰めていた。しかし情報は落ちず、時間だけが流れて行く。新たな犠牲者をこれ以上は出したくなかった。最初は本当に、素直な、正義感だったように思える。



『ど、どうしたの? みっちゃんの頼み事なら何でも聞くよ』



俺が頼った男は、何を言われるのかと訝しげな顔を見せていた。



『お前さ、ヤクザに、なったんだよな?』



そう訊ねるとアキの顔は強張った。マズイ、と思ったのだろう。仕事の話しとなると、いつもやんわりと避けるから、俺に言えないような仕事なんだろうなとは思っていた。高校の時から街のチンピラとも繋がりがあったし、俺が大学へ行くようになってからは、ちょくちょくダブルスーツに派手な面をした連中と連んでいるのも目撃していた。


俺はアキの事を、誰よりも知っている。口には出さなくても、男がどういう世界に靡きやすいのか分かっていた。ただ、アキも俺も、それを口に出してしまえば全てが終いになる事を分かっていたから、知らないふりを通していたのだ。



『そ、れは……』



でも、もう、そんな事は言っていられなかった。視線を逸らしたアキの顔を、俺はじっと見つめながら、深く息を吸って、深く吐いた。



『高校出てから、龍稜組の人間と親しくしてたろ?』



『え、知ってたの?』



アキの目が大きく見開かれた。



『まぁ。…でさ、それを咎めようとか、説教しようとか、そういう事じゃないんだ。お前が本当に組の一員なら、知ってんじゃないかなって。教えて欲しい事があるんだよ』



『それが、みっちゃんの頼み事?』



『あぁ』



真剣な目を向け、頷いた。アキは少し困ったように眉を顰めた後、逃げ場はないと判断したように頷く。



『…分かった。何?』



『バロッコ、知ってるな?』



『あー…うん、知ってる。おやっさんが、うちのシマに売人が平気な顔して売り捌いてるって、かなりキレてたから。ほら、うちはヤクに対してかなり厳しいから』



『龍稜組はヤク御法度ってのは本当なんだな』



『うん』



『で、そのバロッコの出所、分かってたり、しないだろうか』



その言葉にアキは更に眉を顰め、数秒ほど口を閉じて何かを考えている様子を見せた。



『いくつか噂は、あるんだ…』



そう頭を掻く。噂でも何でも良い。バロッコに関して、何も分かっていない俺達からすれば、裏社会の人間が掴む情報は、喉から手が出るほど欲しかった。例えそれが噂だとしても、調べる価値は十分にあるのだ。



『教えてくれないか』



アキはまた更に考え込む。いいのかな、と小さな声で呟いた後、何か意を決したように頷いた。



『うちと敵対してる組織があってね、そいつら本当に悪どいやつらで仁義もクソもないやつらなの。ヤクで金儲けしてるのも有名な話。だからそいつらが最も有力だと思うんだ』



『龍稜組と敵対…って、花柳組、か?』



『正解。関東黒ノ江会直系花柳組が大元だとは思うんだけど、正確にはヤクを作ってるのも、売り捌いてるのも、傘下の松木組がやってるんだと思う。花柳組だと、ほら、警察も目をつけるでしょう? だから、花柳組は資金援助と売買ルートの確保をしてるだけかもしれないけど、松木組を動かしてるのは実質花柳組だから』



花柳組には相当探りを入れたが、何も出てこなかった。松木組に密造させて売り捌いているなら、当たり前だ。出てくるはずがない。アキは腕を組むと、続けた。



『まぁー、たださ、薬物で金稼いでる組だから、バロッコの大元だって噂が立った、ってだけかもしれない。俺は相当黒いと思ってるけど確証がないの。松木組は表立って代紋は掲げないし、売人のチンピラを拉致るわけにもいかないし。だから、絶対松木組だ、とは断言できないってのが現状。うちのシマでヤクを捌くようになって、おやっさが色々探り入れてる最中だからさ、そのうち分かると思うけど』



あれだけ毎日、地を這うように探してきた情報が、裏の人間に聞けば一発で落ちてくる。救える命は倍じゃ利かないと、その時咄嗟に感じていた。



『花柳組は調べてたが何も出てこなかったんだ。それもそうだよな。もし、松木組なら的外れ。早速、明日から松木組に探りを入れてみるよ、ありがとう』



『いいえー。あ、もし売人とっ捕まえて尋問するなら、時間の無駄になると思うよ』



既に何人もの売人を捕まえていた。そしてアキの言う通り、そいつらは何も知らなかった。俺は首を傾けて、アキにその理由を訊ねると、アキは『だってさぁ』と答える。



『大半が半グレとかバイト連中のアホばっかで、大元に繋がってるやつって、僅かしかいないもん。でも一部の売人はきっと松木組と深い関わり持ってるから、そいつらの居場所分かったら教えようか?』



『え、分かるのか』



『まぁ、おやっさんに目ぇ付けられた売人がいてね、顔、分かるから。そいつはきっと上と繋がってるから、捕まえちゃえば、何か吐くんじゃないかな?』



『分かった。そいつの居場所が分かったら、すぐに教えてくれ』



少し興奮気味に伝えると、アキはふふっと笑う。



『ね、みっちゃん。松木組、潰すの?』



『もし確定なら、潰すだろうな。これ以上、蔓延させるわけにはいかない』



『そっか。そうだよね。みっちゃん、ヒーローみたい。警察官って、やっぱり格好良いなぁ』



にへらと笑うアキに、急に距離を感じた。胸のあたりが冷たくなるような、苦しくなるような。アキに、世界が違う、と言われた気がして怖くなったのだ。瞬間、こいつがヤクザだろうが何だろうが、俺はこいつの側を離れられないのだと心底感じた。アキの側にいる為なら、何だってしてしまうかもしれない。アキを離すわけにはいかないと、何かどうしようもなく焦ってしまったのだ。


アキはきっとそんな事、微塵も思ってなかったのだろうが、俺はただただ怖くなっていた。そんな考えの俺が、ヒーローになんてなれるわけがないのだ。



『………馬鹿な事を言うなよ』



ヒーローは、悪と手は結ばない。ヒーローは、常に陽の下を歩く。アキの隣にいると決めた今、俺はヒーローになんてなれやしない。陽の下を歩いてるふりだけを続ける、日陰の人間。アキは屈託のない顔で笑いながら、わしゃわしゃと豪快に髪を乾かしていた。数分の沈黙の後、アキは口を開いた。



『あ、のさ…、みっちゃん、』



アキは髪を乾かし終えると、少し落ち着いたのか、椅子に深く寄り掛かかった。俺は熱いハーブティーを片手に、キッチンからアキの元へと戻った。ひとつをアキに渡すと、アキは受け取りながら、言いにくそうに、でも何かを決意して告げようと、緊張しながら言葉を紡いだ。



『俺、さ、ヤクザはダメだって、みっちゃんに口酸っぱく言われてきたけど、でもやっぱり、俺にとっては龍稜組が居場所なんだ…。俺、馬鹿だから、考えるの苦手だし、何やっても刺激を求めてしまうから、真っ当な仕事には就けないし。龍稜組ってね、ヤクザだけど、なんて言うのかな、任侠として生きてる人達の集まりで、居場所のない連中に居場所を与えてくれてるんだよ。だから俺、先代の考えや生き方に惚れて、ヤクザやろうって決めたのね。でも先代は、極道なんて先の見えない世界に足突っ込むな、って盃はくれなかった。…だから、何が言いたいかと言うとね、龍稜組の人達が無理矢理、俺を構成員にしたわけじゃないんだよ。洗脳されたわけでも、弱味を握られたわけでもない。俺がなりたくて、なったの』



『うん。…そうなんだろうな』



『一年前に、先代が亡くなってさ、俺はどうしても龍稜組に貢献したくて、跡を継いだ保谷さんって人から盃を貰ったの。今の組長で、俺がおやっさんって呼んでる人なんだけど』



今では珍しい、任侠に従い生きる組織。今のヤクザとは大きく違う一面があり、組対も龍稜組をあまり問題視していなかった。理由として、違法性の高い犯罪行為を行わない、もしくは立証出来ない、という事が大きかったからだろう。その組に、アキが居場所を見つけて、骨を埋めたいと思う気持ちは、分からないでもなかった。


だが、刺激にまみれた快楽主義な男に、厳しい任侠の世界で仕事が務まるのかと問われれば、疑問も湧いて出てくるが、まぁ、天職なのかもしれない。アキはそう考えていた俺を見ながら、怪訝な顔をして、小声でぽつりぽつりと言葉を吐き出した。



『俺は、…俺はね、ヤクザになっちゃったけど、みっちゃんと離れたくない、ってずっと思ってた。でもみっちゃんは警察官だから、俺が足枷になる事も分かってた。だから言えなかった。言ったら、全て終いになる、から。みっちゃん、俺、みっちゃんの為なら何でもするよ。俺が集めて渡せる情報は渡すから。だから、俺を捨てないで、ほしい…。これからも、ずっと一緒にいてくれない、かな…』



アキは俺にとって何よりも大切な存在で、生き甲斐と言えるような人物で、それは変わる事がなかった。ヤクザになった、と言われても、そうですか、と別れを切り出す事は到底無理だったのだ。言葉尻から、少しでも距離を感じると怖くなるほどなのだから、俺から別れを告げる事はきっと出来なかった。アキが人を殺そうが、それは変わらないだろう。離れたくないと思う気持ちは、きっと俺の方が強く、何倍も依存し、執着していた。


だから、こいつがヤクザになっても切り離せないし、情報を得る事で、言い訳を作るように側にいようとするのだ。



『当たり前だろ。別れるつもりはないよ。ずっと一緒にいる』



ポンと、アキの頭を撫でる。



『…え、ほ、本当?』



『ん。本当。…これからも宜しく』



アキは心底安堵したように胸を撫で下ろし、安心したように顔を綻ばせた。『良かった』と何度も呟き、俺はアキの頭にそっとキスを落とした。


上と繋がりがあるだろう売人のアジトが発覚した、とアキから連絡があったのは、その数日後の事だった。上、が松木組だという確証も得たらしく、シマ荒らしをする松木組と、正面からやり合うつもりだったらしいが、警察が潰してくれるなら、と手を引いたのだ。当時、アキは保谷さんに俺の事を報告し、保谷さんがきっと、俺に伝えるようアキに言ったのだろう。つまり、俺の存在をその頃から保谷さんは知っていた。


偶然を装ってアジトから出て来た売人をとっ捕まえ、尋問をかけ、そこからは、あれよあれよと言う間に松木組に関する情報が落ちた。自分でも驚くほどスムーズに事は進み、同僚からも先輩からも良くやったと褒められ、若手のホープとして注目されるようになった。


そこからだった。アキを通して情報を貰い、龍稜組にとって邪魔な組を潰す事が多くなった。龍稜組の利益は増えたろう。俺は淡々と、得た情報を使ってヤクザ連中を逮捕していった。


だが、ヤクザであるアキと繋がっている事は、決して褒められたものではなく、悪事としていずれ発覚するものだった。


先輩のひとりが、ある港倉庫にて銃の売買が行われると情報を掴んだ。大きな取引が予想され、きっと関わった組は一網打尽に出来るだろうと気合が入っていた。念の為、龍稜組が関わっていないか調べてはいた。もし関わっていたとしても、乗り込む事にはなったろう。だが、アキに一声かける事は出来るだろうと思って調べていたが、結果、龍稜組の関わりはなかった。


合計18名を逮捕。そして身柄を押さえた連中の中に、俺の運命を大きく変える人物がいたのだ。それが、菊島という男。刑務所へ送り込んだその菊島は、刑務所に入って一週間ほどで同じ房にいた男に殺された。その男は、菊島と敵対組織にあった組に雇われたチンピラだった。


菊島が殺された事で、俺の状況は一変した。菊島が殺された数日後、部署にある手紙が届いたのだ。俺とアキとの関係、俺が手柄を立てた件の裏には必ずヤクザの協力があった事、見返りは大金と、そして警察が持つ情報である事。今まで関わってきた件に関して、細かく記されていた。金のやりとりに関しては、でっち上げだったが、そんな事は、取るに足らない問題だった。ヤクザであるアキから情報を受け取り、アキが所属する組織には便宜を図り、利益をもたらす。それが何よりも問題なのだから。


あっという間に刑務所に放り込まれ、アキも同時期に銃刀法違反で強引に逮捕される。示し合わせたようで、妙だった。


後々分かったが、アキが兄貴分の代理で拳銃の受け渡しに行ったその場所に、タレコミが入り、警察が押し掛けたのだと言う。相手が来るのを待っていた為、逮捕されたのは自分だけ。取引用に持っていた拳銃一丁は押収され、銃刀法違反でお縄。


そんな事も、まぁ、あるか、とは思うが、俺が刑務所に入るのと同時期だった為、何か妙な違和感を抱いたのだ。ただその正体は分からないままだ。


何がともあれ、問題は出所後だった。俺に恨みを持つヤクザ連中にアキまで狙われるハメになっていた。その組織が花柳組、という事も最悪だった。


ムショを出たあの日、数日早く出ていたアキは平然とした顔で、『お勤めご苦労様です!』と迎えに来てくれたが、瞼は切って腫れ上がり、頬は鬱血して紫色になっていた。


俺のせいで龍稜組の連中に殴られたのかと思い、そう訊ねるが、違うと答えが返ってきた。ムショを出てすぐ、組の人間がひとり迎えに来たらしい。派手に出迎える事は出来ないが、皆んな心配しているし、皆んな味方だと言ってくれた、と表情を緩めた。そして、藤さんにも宜しく伝えてくれ、と。


しかし、花柳組がかなり怒りを露わにしている事は、龍稜組の中でも問題だった。花柳組と龍稜組は長い事敵対関係にあり、それが先代の時に少し関係が緩和されたのだ。なのにバロッコを花柳組の子でもある、松木組だと特定し、ついには壊滅をさせた刑事が俺で、情報を流したのが龍稜組のアキだと明るみになってしまった。刑務所を出たらすぐに報復してやろう、そう思っていたのだろう。


アキはしばらく事務所に顔を出さず、街にも出るな、部屋で待機してろ、と都内の小さなマンションの一室を当てがわれたと言う。それでも状況を知りたいと、街に出た瞬間この有様だと、アキは自嘲した。バッジを着けていないチンピラ8人ほどに殴られた、と言うが、花柳組と無縁だと言う方が無理がある。保谷さんに報告すると、死ぬ気かと散々叱られたらしい。


俺はどうするべきかを考えていた。アキの側にいる事は何よりもアキを危険に晒すのではないかと、迎えに来たアキの元から去ろうとした。だがアキは、俺の考えを悟ったらしく、腕を力強く掴むと、『大丈夫。大丈夫。一緒にいよう』そう微笑んだのだ。


『おやっさんが、俺達は一緒にいた方が良いってサ』


そう言われ、俺はアキに甘えてしまった。


毎日、毎日、神経を擦り切らして生きていくしかなかった。俺だけなら良い、でも、アキはもう解放してやってくれないかと、どれほど願った事か。俺が直接、花柳組と話す、そう保谷さんに伝えてくれとアキに頼むと、アキは保谷さんに電話を掛けた。保谷さんは声の低い男で、淡々と俺に告げた。


『自分の尻拭いしたいなら、これ以上、火に油を注がない事だ。お前が顔を見せりゃぁ、あいつらは有無を言わさず、お前を殺すだろうよ。お前は弁明する事もできず、呆気なく殺されて終い。原の命だって狙われたままだ。オマケにお前が殺されたとなりゃぁ、原は使い物にならねぇだろうさ。ナシつける余地はあるんだ。お前は絶対に動いちゃならねぇよ。ま、見張もつけてるから、お前が動いたら部下がお前を部屋まで引きずって戻すだけだがな』


何も出来ない自分が不甲斐なくて仕方がなかった。自分が起こした問題を、自分で解決できない。龍稜組に迷惑を掛け、組のトップである保谷さんが出てくる始末。アキの命が狙われ続けている事と、組に迷惑を掛けている事で、ストレスはピークに達していた。唇を噛み締め、自分の弱さを感じながら日々を過ごしていた。


そんな中、アキの携帯に保谷さんから電話が一本入る。アキは少し話すと、携帯を俺に渡した。



『みっちゃん、…おやっさん、…保谷さんから』



携帯を受け取り、『はい』と答える。



『保谷だ。お前に聞いておきたい事がある。下に部下を待たせるから、エントランスに出て来れるか』



『はい。アキは…』



『留守番よ。その部屋は安全だ。あいつには部屋から出るなと伝えて出て来い。良いな?』



『分かりました』



アキを部屋に残してエントランスに下りると、白い普通車が停まっていた。運転手もヤクザ者らしくない、パッと見はどこにでもいるような好青年。だが、その後部座席のウィンドウには軽くスモークがかかり、ウィンドウが下がると、高級なスーツを着た男がいた。堅気ではないと、すぐに分かった。瞬間、この人が保谷さんなのだと。


『早く乗れ』、そう一言命令した。俺が咄嗟に後部座席に乗り込むと、車はすぐにその場を離れた。



『あの、…えっと、』



まともに挨拶をした事がなかった男に、俺が戸惑っていると、『原から色々と聞いてる』と端的に答えが返ってくる。



『藤 充稀、お前がそうなんだね?』



『はい』



『保谷だ』



『存じてます』



『だろうな。組対のホープだったのだからね』



眉間に皺を寄せる俺に、保谷さんは口を開いた。



『お前が警察でいられなくなったあの事件、発端が誰か、知りたくはないか?』



『…え、発端、ですか』



『あぁ。誰がリークしたか』



『身から出た錆、ですから』



『ほう、知りたくはないのか』



『全く知りたくないと言えば嘘になりますが、今更送り主を知ったところで、という気持ちです。俺自身はどうなろうと自業自得ですから。…ただ、アキは、…あいつは、俺に言われて情報を渡していただけで、何も悪くありません。だから、どうにかしてあいつだけは解放してやりたいんです。その為なら俺は何だってします』



『自分自身はどうなっても良い、か。……まぁ、原だって無関係じゃねぇからなぁ。お前が無関係だって言ったところで、組を潰された連中は黙ってねぇだろうな』



そう、だよな…。無意識に拳を握っていた。保谷さんは言葉を続ける。



『うちとしては、邪魔な組をお上がほいほい消してくれるから、お前には感謝しかねぇが、他の組はそうじゃない。まして、警察と繋がって組を潰すことに加担していた組織がうちだと公になっちまった。どれも悪どい組ばっかで、消えて清々するって組ばっかだけどさ、逮捕された組からは怒りを買って当然だわな。ま、原に関しては、逮捕される直前に破門にして、うちとは無関係だって表向きはなってるが、そのうちまた組に迎え入れるのは、連中も分かりきった事。だからこそ、うちに矛先が向く。つまり、原を無関係には絶対にできねぇって事よ』



『…そう、ですよね。アキが、…あいつが狙われる理由は分かってます。どうにも出来ない事も。そして、保谷さんが動かざるを得ない状況を俺が作ってしまった事も。だからこそ、何もせず、部屋で待っているのは耐えられません。何か俺に出来る事はないのでしょうか。相手と話す事は火に油を注ぐ事だと、前に言いましたが、俺に出来る事なら何でもします』



保谷さんは片眉を上げて、『へぇ』と頷くと、俺の目をじっと見つめて口角を上げる。



『ならお前、うちに来い』



眉根がぐっと寄った。俺に、ヤクザになれと、保谷さんは言ったのだ。何も答える事が出来なかった。俺に出来る事なら何でもする、そう思った事は確かだった。だがヤクザになる事に、一線を超えてしまう事に対して、俺は覚悟ができていない。俺の動揺を悟ったのだろう、保谷さんは『あー、ただその前に、』と顎を撫でる。



『ひとつ、話しておくべき事があってな。お前が逮捕された発端。あの密告文の事だ』



『…はい』



『お前は身から出た錆だと、探るつもりはないらしいけど、俺も知らぬふりをしてるわけにはいかない。お前を本気で身内に引き込むなら、何もかもを言っておかなきゃならないと思ってね』

  


何もかもを言っておかなきゃならない。その言葉が、気になった。この人は一体、何を知っていると言うのだろう。



『俺が潰した組の連中の誰かがあの手紙を送ったと思っていましたが、違う、という事でしょうか』



保谷さんは表情を変えず、口を開く。



『お前が逮捕して死なせたあの菊島なぁ、俺とは兄弟盃交わしてたんだ』



ひゅっと喉が鳴り、背筋が途端に凍り付いた。



『まぁ、盃交わしたのももうだいぶ昔の事でさ、代紋違いだし、知らないやつの方が多い。だが問題は、うちの若頭だった能鳥って男なんだ。昔から菊島に心酔しててな、逮捕されて殺されたって聞いた時、妙な行動に出なきゃ良いと思ってはいたんだ。…だがその数日後だろ? お前のところに密告文が届いた。しかも詳細が細かく書かれてたって話だったろ? 変だと思ったんだ。で、能鳥を問い詰めたら案の定、送ったのはあいつだった』



復讐だった、という事なのだろう。だが、そんな男が若頭にいる組に、俺は在籍なんてできるわけがない。仮に俺が保谷さんと盃を交わしても、その能鳥という男は俺を消したいと思うに決まってる。



『………そう、ですか』



それに何より、この人は何を考えているのだろうか。兄弟分を逮捕し、死なせた原因でもある俺を、身内に引き入れようだなんて。裏があるのではないかと、俺は眉間に皺を寄せた。



『そんな罰の悪そうな顔をするなよ、え?』



『いえ…』



『まぁ、そういう顔にもなるか。だが言っておくけどさ、お前を陥れたのは俺じゃない。確かに俺と菊島は兄弟分だったけど、俺は酷い男でね。利ってのを考えちまう。確かに、あいつが殺された事は辛い。けど、お前は刑事として仕事をしただけだ。お前みたいな優秀な警察のコネなんてそうそう作れっこないからさ、それを逃すようなマネ、俺には出来ない。お前には刑事でいてほしかったんだがなぁ…。だから、俺がお前を恨んでると考えてるなら、答えはいいえ、だ。安心しろ』



俯いて、考える。何を答えるべきか。何が正解か。



『…で、俺の気持ちとしては、優秀なお前には、うちに来てほしいって事だ』



はい、と頷く勇気も、いいえ、と答える勇気もなかった。答えを出す事が怖いのだ。無言でただ眉間に皺を寄せる俺に、保谷さんはふっと相好を崩した。



『まぁ、悩むよな。元とは言え、刑事に極道になってほしいって言ってンだからなぁ。でも俺の気持ちは変わらない。お前は警察内部の情報をよく知ってる。プラス、頭が切れて、賢く、優秀だ』



『……少しだけ、考えさせて下さい』



『なぁ、ミツキ。今のお前の心配は何だ?』



『俺の心配、ですか…』



悩んでいた俺に、保谷さんは微笑んだ。



『あぁ。正直、花柳組と話つけても、お前に後ろ盾がないんじゃぁ、あいつらはお前に何をするか分からない。組として話つけりゃぁ、原には手ぇ出さないだろうが、お前は違う。だからお前を守る為にも、うちに来た方が良いとは思うが、お前だって思うところはあるんだろうよ。お前は一体、何を不安視してる?』



この人の器の大きさを突き付けられた気がした。花柳組との関係を崩したキッカケの俺を、守る為に仲間になれと言う男の姿は、どうしたって格好良く見えた。



『………その、有難い話しではありますが…、能鳥さんが許さないかと。その方にとって俺は、大切な人を奪った刑事にすぎません、だから…』



そう言うと保谷さんは眉根を寄せた。



『能鳥はもういねぇよ』



『………え』



いない、とはどういう事か。



『お前が刑務所に放り込まれた後、行方知れずになってね。こっちも隣の県まで車走らせて連日探したんだ。でも見つからない。俺たちも暇じゃないんでね、一週間程度探して切り上げちまったが、あいつは忽然と消えやがった。…ちょいとお灸を据えすぎたろうかね。独断と私情で、うちにとっての大切なコネを、あいつは切ったんでな。かなり叱ったんだが、…翌日から姿は見えねぇのよ。ま、飛んじまったって事よな』



保谷さんは大きな溜息を吐くと、『お前が来てくれりゃぁ、千人力なんだかな』と眉を下げた。保谷さんのその瞳を見ながら、わかりました、と答えを出そうと口を開くと同時に、保谷さんは言葉を続けた。



『お前、俺と盃交わして、うちに来い。そうすりゃぁ、お前も原も俺の子よ。花柳組とはナシつけて、お前も原も一緒に守ってやる。だから、どうだい。うちに来て、原と一緒にもう一度、人生をやり直さねぇか?』



その言葉に、どうしようもなく、惚れてしまった。俺が保谷という男に、トンと落ちた瞬間だった。気付くと俺は頷いていた。保谷さんは『頼りにしてるぞ』と優しく微笑んだ。



『宜しくお願いします』



頭を深く、深く下げる。この人は、アキだけじゃない、俺の事も気にかけてくれて、しかも一緒に守ると言ってくれた。そんな厄介事を引き受けてくれる人なんて、この世界にどこを探してもきっといない。


翌日、アキと共に事務所へと呼ばれた。保谷さんの左手の小指には包帯が生々しく巻かれ、瞬間、俺は全てを理解し、同時に決意し、意志を固め、忠誠を誓った。


俺はこの人の為に命を使おう、と。


保谷さんとふたりになると、保谷さんは笑った。



『なぁに、立派な指がそのうち生えてくるんでね。今の医学ってのは凄いから』



ケタケタと笑う男に、心底惚れてしまった。だからこそ、この人が俺を昇格させようと動いて非難されたり、俺に優しく微笑む度に怖くなる。


一方で、この人がやけに冷たい目を向け、俺に欲をぶつける時だけは、こうあるべきなんだと気が楽になる。俺は保谷という男に心底惚れている事だけは確かだった。恩義を感じて、裏切る事など一生ないと思った事も確かだった。


アキは、俺が保谷さんと盃を交わした日の夜、笑って言った。



『みっちゃん、おやっさんに惚れたな?』



俺が素直に頷くと、アキは白い歯を剥き出して屈託なく八重歯を剥き出した。



『俺が極道やってる理由、あの人にテッペンを取ってもらう為なの。だから一緒に頑張ろう。おやっさんを、日本一にしよう!』



アキは心底、保谷さんに心酔していたし、俺もあっという間に取り込まれていった。それはもう、瞬く間に。俺も、アキと一緒に保谷さんにトップを取ってもらいたいと強く強く、願うようになっていたし、そうなる為に動き、金を作り、手を汚していった。保谷さんの命令には全て、はい、と答え、恩を返すように忠誠を示し続けた。


………

……



「保谷の親分に、何か言われたンすか」



車に戻った俺を見て、周りからシュウと呼ばれるようになった用心棒兼運転手の佐々木 柊介は、無表情に問い掛けてきた。若い割に肝が据わってるし物怖じしない。物怖じしないのは良いが、まだ組員でもないのに俺の事に関して探ろうとする節があった。もしかすると、関田の叔父貴から何かを言われたのかもしれないし、こいつなりに責任感ってのを感じて、俺の事を知ろうとしてくれているのかもしれない。些細な俺の変化に対して、いちいち聞くような男だった。


だが今の俺にとって詮索は避けてほしい事だった。俺はシュウの言葉を無視して「…車、出してくれ」と、窓の外を眺める。



「分かりました」



保谷さんの部屋を出た後、俺はひたすらにアキの事を考えていた。何故、保谷さんはアキを…。保谷さんの目は本気だった。本気で俺にあいつを殺せと言ったのだ。俺とアキの付き合いが長い事も、どれほど俺があいつに対して依存しているかも、十分に分かってるはずなのに、俺に、あいつの殺しを命じたのだ。俺は静かな空間の中で舌打ちを鳴らした。無表情なシュウがバックミラー越しに一瞬俺を確認するが、視線はすぐに外される。


俺に殺しを命じる事の意図を考えていた。だがそれを考えると、どうしたって俺は試されているのかもしれない、と考えざるを得なかった。保谷さんは、自分とアキとを天秤にかけさせ、自分にどれほど従順かを測っているのかもしれない。跡目争いで、本当に信用できる人間かを見極めたいから、だろうか。忠義を尽くしてきたつもりだが、それでも足りないと言うのだろうか。


分からない。だが何にせよ、俺にだけ命令を下してるわけではないのかもしれないと、即座に携帯を取り出し、メールを打ち込む。


『今どこにいる? 家にいるなら米があったか確認してくれないか』


いつもそんなメールなんか送らないのに、不安は俺から冷静さを奪うようだった。


急に、どこにいる、とだけ送ってしまえば、あいつは変に勘繰ってしまうだろうから、カモフラージュのように余計な要件を付け加えて送信する。


しばらくアキからの返信を待った。もしかしたら、既に寝ているかもしれないが、それでもじっと返信を待っていた。待つ時間というのは永遠に感じる。車内の空気が張り詰めて感じられ、自分の鼓動だけがやけに大きく、耳元で鳴っているようだった。


不安は一分一秒と増していき、アキから返信がない事に苛立ちを感じていた。アキの始末を命じたのは俺だけじゃないという可能性が、じりじりと首を絞めていく。今頃、誰か他の刺客があいつを…。いや、単純に仕事かもしれないし、寝ているだけかもしれない。しかし、最悪の事態を考えては気分が悪くなった。



「え、やば…」



顰めっ面をしていたであろう俺をよそに、シュウはぽつりと呟いた。それは俺にではなく独り言。ゆっくりとブレーキを掛けて車を減速させ、最後には停車させた。何事かと外を見るとまさかの大渋滞に捕まってしまったらしい。まったく、早く帰りたい時に限ってこうなる。



「事故、みたいっすね」



シュウはキョロキョロと辺りを見回し、腰を少し上げて前方を確認している。



「そうか」



「今日、連休初日でしたよね? だからこんな混んでンすかね」



「さぁな」



「あの、ミツキさん、」



「下の名前で呼ぶなって言ったはずなんだけど」



「だって富士山って馬鹿にされてたじゃないすか」



「関田の叔父貴だけだろ」



「ミツキさんって呼ばれんの嫌っすか」



保谷さんだけが、ミツキ、と名前を呼ぶ。女性のような名前の印象が強く、いつからか、下の名前で呼ばれる事に対して抵抗感があった。だが大抵の人は藤、と苗字で呼ぶから、保谷さんに、ミツキ、と呼ばれるまでその感覚を忘れていた。ミツキ、と呼ばれる事に妙な心地がするるが、保谷さん相手に、下の名前はやめて下さい、と言えるわけもなく、ずっとミツキと呼ばれ続けている。だからお前は…、とシュウに対して言うべきか悩んだ挙句、「違和感しかないから」とあやふやに誤魔化した。それこそ女々しい理由だ、と思われるのも腹が立つからだ。



「そうすか。…俺、ミツキさんの事、もっと知りたいんで教えて下さい」



「……はぁ」



無情な溜息が漏れるが、シュウは顔色ひとつ変えない。機嫌損ねたかな、とか、怒らせたかな、とかこいつは思わないらしい。



「腹減ってないすか」



「……悪いけど、今話したい気分じゃないんだ」



「そうすか。黙ってろ、って命令されたら、そりゃ黙りますけど、今のミツキさん、かなり酷い顔してますよ。何か溜め込んで抱えてんなら、俺は力になりたいだけなんで、俺に出来る事があれば何でも言って下さい」



そう言ってシュウは前に向き直り、口を閉じた。かなり酷い顔、…か。頭を掻きながらまた外を眺め、ただ携帯を握り締めて返信を待っている。車は一向に動く気配はなく、何度も携帯を確認しては重い溜息を吐いていた。ぽつり…、雫が窓に落ちる。重苦しい感情に拍車を掛けるように雨が降ってくる。勘弁してくれ。じっと窓の外を睨み付けていると、ヴーと手の中で携帯が振動した。咄嗟に中身を確認すると、相手の名前と、メールの手紙アイコンが画面にゆらゆらと表示されている。



『みっちゃんからのメール、珍しすぎて死ぬほど驚きました。今すぐ確認してあげたいけど分かりません。ホントごめん!!今外にいるの。まだ帰れそうにない』



その文面に心底安堵した。深い溜息を吐いて、携帯を握り締める。保谷さんが俺に殺せと言ってきたからといって、他の誰かもこいつの命を狙ってるわけではない。心配のしすぎだ。大丈夫、大丈夫…。



『悪かった。飯を食いそびれたから帰って食おうかと思っただけだ。何か適当に食うよ。お前も食事がまだなら何か作っておこうか』



返事はすぐに返ってきた。



『俺も食ってない! けどあと1時間は戻れないと思う。久しぶりにみっちゃんのスペシャルブレックファーストが食べたい!』



スペシャルブレックファースト。スペシャルブレックファースト…。脳内で繰り返して、ふっとつい堪え切れず笑ってしまった。大学生だった頃、アキは夜な夜な出歩き、毎度朝帰りだった。そんなこいつに、俺が作っていた朝食の事をきっと言ってるのだろう。厚切りのトースト2枚にはごってりのイチゴジャム、横には半熟の目玉焼き、カリカリベーコンとソーセージ。それからインスタントの甘いコーンポタージュ。野菜嫌い、甘党、肉好きのこいつのための朝食で、栄養なんてのは無視である。


だが食パンは切らしてるし、ソーセージもベーコンもない。コーンポタージュなんて久しく飲んでないか。コンビニで買えるだろうし、コンビニで買って帰ろう。そんで、作って待っててやろう。



『分かった。作っておく』



『まじ? 頑張って早く帰る! みっちゃん好きすぎて死にそう』



その言葉の後には、ハートマークが大量に付いている。ふふっと頬を緩めながら、メールを閉じて携帯を懐に仕舞った。早く帰って、あいつに会いたい。生きてると、しっかりと感じたい。



「ようやく動いたっすね。ゆっくりっすけど」



ゆっくり、ゆっくりと車は進み、正面衝突して大破している車の横を通り過ぎ、救急車を横目にタバコに火を点ける。



「結構な事故っすね。あ、でも運転手、ピンピンしてんじゃん。つえぇー」



窓を少しだけ開け、ふぅと煙を吐き出す。救急車のドアは開かれたまま、事故を起こしたであろう運転手は頭から少しだけ血は流しているものの、救急隊に頭を下げながら話している。意識はしっかりとあるらしい。そんな光景を横目に、煙は外へと流れていった。


俺は分かっていた。保谷さんがもし俺を試しているなら、アキを天秤に掛けさせているなら、どうなってしまうかを。だから、覚悟を決めなければならないのだ。



「シュウ」



「はい」



「家の近くのコンビニ寄ってから帰ってくれ」



「はい」



しばらく車を走らせ、シュウは家の近くのコンビニに車を停車させた。食材を買い、コンビニから出て来た俺の手にぶら下がる袋を見て、シュウは「女っすか」と無表情に訊ねた。



「そんなもんかな」



後部座席に戻ると、シュウはゆっくりと車を発進させる。



「…女、いたんすか」



「そうだな」



「一緒に住んでんすか」



「あぁ」



「可愛いんすか、彼女」



「そうだな」



「名前なんて言うんすか」



「教えるわけないだろ」



「好きなんすか」



「好きじゃなかったら一緒にいないんじゃないの?」



「結婚するんすか」



「…質問、多くない?」



「答えてくれるんで」



そう言われてしまったら、きちんと答えた俺が馬鹿みたいだ。



「それにミツキさんの事、知りたいって言ったじゃないすか」



それにまただ。こいつは何を望んでるのだろう。妙な事に引っかかってしまうなと、シュウの言動から違和感を感じていた。考えすぎだろうか。俺はまた窓の外へ視線を逃した。


シュウは懲りずに口を開く。この若者は放っておく、って事を知らないのかもしれない。



「ミツキさん、さっきまであんなに機嫌悪かったのに、メール受け取った途端に雰囲気変わりましたよね。彼女さんからっすか。結構尻に敷かれるタイプっすか」



シュウはベラベラとよく話す。俺が思った事もないような事を、気付かなかった事を、何の気なしに指摘する。俺がアキの尻にね…。敷かれてんのかな。クスッと笑ってしまった。



「何笑ってんすか」



「いや、なんでもない。尻に敷かれてんのかなと思っただけ」



「結婚はするんすか」



さっき流したはずなんだけどな。俺は呆れたように頭を掻きながら答えた。



「しないよ」



「子供、作んないんすか」



「予定はないかな」



「そっすか」



散々質問をされるが、さすがにもう飽きたのだろう。少しの間、無言が続いた。家に着くと、シュウはエントランスの前に車を停め、後部座席へ回ってドアを開けようとシートベルトを外すのを見て、俺はそそくさと自分でドアを開けて外へと出た。



「ちょっとちょっと、俺が開けるって毎回言ってるじゃないすか」



「無駄な時間だろ。……これ、今日もお疲れさん」



そう言ってコンビニで買った袋を突き出すと、シュウの切れ長の瞳がぎょっと見開かれる。おにぎりやサンドイッチ、好みが分からないがカロリーの高そうな肉にまみれた弁当とお茶を2本、こいつに買ったものだった。



「俺の分…すか」



シュウは受け取ると、中身を見て更に目を見開く。思った以上に目を輝かせていた。



「あ、ありがとうございます」



「じゃぁ、気ィつけて帰れよ」



「明日は15時にここで待ってます」



「うん」



そう去ろうとした時、シュウは「あの!」と声を張り上げた。何事かと振り返ると、シュウは頭を下げている。



「飯、マジでありがとうございます! こ、今度は晩飯、付き合って下さい!」



そんな事か。連れて行け、ではなく、付き合え、ね。あまりにも勇気を出して言いました、と言わんばかりの男の言葉を邪険に扱うのも躊躇われるが、やはり心に引っ掛かる何か妙なものに気付いてしまいそうだった。そもそも違うなら良いのだが、俺は変に鼻が利く。だから流すように、「分かった」とだけ頷いて、マンションの中へ入った。


部屋はしんと静かだった。アキはまだ帰って来ていないのだろう。手を洗い、部屋着に着替えてキッチンに立つと、つい大学生の頃を思い出してしまう。毎朝毎朝、酔ってへらへら笑いながら帰って来てたな、とか、やたらベタベタとくっつくんだよな、とか。お土産〜とか言いながら、誰かから貰ったであろう、可愛く包装されたチョコレートだのクッキーだのを俺に渡す事もあったな、とか。


アキは阿呆だが昔からよくモテてる。人たらし、と言うのだろうか、イカれてはいるが、きっと放っておけないタイプの人間なのだろう。そう考え事をしながら、ベーコンをフライパンに乗せて、しっかりと焼き上げる。カリカリと脂が溶けていくのが楽しくてじっと見ていると、玄関のドアが開く音がした。ドアを眺めていると、右のこめかみに大きな絆創膏を貼ったアキがドアを開けて帰ってきた。



「やばいー! 良い匂いすぎるー!」



アキだ。ちゃんと、アキが帰って来た。メールでやり取りがあったとは言え、その安堵は途端に胸を満たした。ほっと肩を撫で下ろす俺に、アキは猫のように擦り寄っては「美味そー!」と騒いでいる。


第一声がただいまではない事に、顔を綻ばせながら「お疲れさん」と声をかける。


アキはにへらと表情を崩すと、体を離してせかせかと手を洗い、まるで新婚夫婦のように俺の頬に一度キスを落として、そのまま横に立つ。焼けていくベーコンを一緒になってじっと見下ろしている。


麻のシャツには、血が付いていた。返り血だろう。それにこめかみの傷。こいつの抱えている仕事が、噂通り保谷さんと関係があるのなら、俺も意を決してアキを問い詰めなければならない。


不安に喉が鳴る。だが、まだ何も読めていないのだから、ひとまず今は知らないふりを通すべきだろう。



「着替えてきたらどうよ。血ィついてんぞ」



顎で指すと、アキは気付いていなかったのか、その血痕をポリポリと指で引っ掻いている。



「本当だ。取れそうにないよね。気に入ってたのになぁ。捨てよー」



シャツを脱ぐアキを見ながら、続けて訊ねた。



「そのこめかみ、どうした」



アキはシャツをくしゃりと丸めるとゴミ箱に放った。口元に苦笑のようなものを浮かべながら、視線はしばらくシャツの上で止まっていた。その視線が俺に戻ると、「一升瓶で殴られた」と答えが返ってくる。



「は?」



「3針縫ってますの」



右手の3本の指を立てて俺に向けると、へらへらと白い歯を剥き出して笑われる。どう反応して良いものか分からない。何を呑気に笑ってんだ、が正解か。痛そうだな、が正解か。そもそも何故、一升瓶で殴られたんだ。俺が唖然としていると、「着替えてくるね」とそそくさと寝室へと消える。


喧嘩でもしたのか、それともやはり仕事か。一升瓶で殴られるような仕事って何だ。というより、一升瓶で殴られたのに、こめかみの切り傷だけなのか? 脳に異常とかないのか? 不安に不安がどんどんと募っていく俺に対して、当の本人は驚くほどに呑気である。Tシャツとボクサーパンツ姿となったアキは、寝室から出てくるや否や、「まだですかー」と甘えた声を出しながら、後ろから抱きついた。ベーコンの脂を取り、ワンプレートに全てを盛り付ける。



「出来たよ。食おう」



最後に甘いコーンポタージュをテーブルに置くと、アキは子供みたいに屈託ない笑顔を俺に向けた。可愛い顔に3針の傷をつけて、へらへらと。



「いただきまーす」



「召し上がれ」



アキはトーストをひと齧りすると、頬を緩め、足をバタつかせて体を揺らす。



「うまー。幸せすぎて死ぬー」



「ふふ、良かった」



自分用に淹れていたコーヒーを一口啜り、首を傾けてアキを見ていた。俺が作った飯を口いっぱいに頬張るその姿を見ながら、俺は淡々と考えていた。


俺はこいつを殺せない。保谷さんがこいつを殺したい理由を探るしか、手はない。



「…で、どこの誰がそれ、つけたんだ?」



こめかみを見ながら言うと、アキは気まずそうに視線を逸らして口をごもる。



「あー、えっとね、…どっかの知らない酔っ払い。ちょっと喧嘩になっちゃってー」



それが嘘だという事はすぐに分かった。相手は酔っ払いなんかじゃないのだろう。



「みっちゃんは食わないの?」



「作りながらつまんでたから」



「そかそか。お風呂は?」



「まだ。シャワーで済ませようと思ってたけど」



「ふーん」



「一緒に入るか?」



「え? 良いの? 嬉しい! 入る!」



「ん。じゃぁ風呂、入れてくるわ」



「ありがとうございます!」



無邪気なアキが背負うものはとは何か。こいつが、俺に嘘をついてまで守りたいものとは何か。掴めない。読めない。分からない。取っ掛かりが欲しかった。


朝方、疲れ果てて眠るアキの顔を見下ろし、3針の傷にそっと触れた。全く起きる様子のない事を確認して、アキの枕元へと視線を移す。悪いが、こうするしかない。言い訳を考えながらアキの携帯に手を伸ばした。ヒントになるものはないか、ひとまず通話記録を探る。


不審なものは一切なかった。通話はナオトとセナの若者コンビからが多い。それから望月のカシラ、若頭補佐の礼門さん、そして保谷さん。やはり、保谷さんから何度か電話を受けている。どんどんと、あの噂の信憑性が高くなり、不安に喉が締め付けられるような感覚を感じた。


電話内容は今更、調べようがなく、メールはどうだろうかと、メールボックスを開く。勘繰ってメールを読み漁る事、十数分。俺が考えているようなやり取りはなかいようだった。保谷さんとはメールのやり取りはないようだし、主にナオトとセナからの業務的なメールだけ。頭を掻く。アキが俺に嘘をついてる事は明白なのに……。



「…何してんの」



その時、タイミング悪くアキは目を覚ましてしまったようだった。眠そうに目を擦りながら俺の事をじっと見上げている。しまった…と思うのと同時に、何か言い訳を並べようかとしたが、下手に言い訳せず、俺が違和感を感じている事を伝え、問いただすチャンスなのかもしれない。そう口を開こうとした時だった。アキは眉間に深い皺を寄せて俺の腕を掴んだ。



「みっちゃん、…俺、浮気しないよ。ずっとみっちゃん一筋だよ。信用、できないかな?」



そう間違った方に勘違いしてるアキを放っておいて、何も知らない世界に置いておきたかった。でもアキはその面倒事のド真ん中にいる。携帯をアキに返して、直接確認しようと決めた。



「携帯、覗いて悪かったな」



「え? ううん。別に大丈夫。…みっちゃん、何か不安になったんでしょ? 何でかは分からないけど、みっちゃんが俺の携帯を覗くくらいだから、きっと俺、すごく不安にさせるような事したの…かな?」



不安にさせるような事。間違っちゃいなかった。 



「まぁ、不安になったね」



「俺、本当に浮気してないよ? 何だろ。ソープに行ってるのもケツモチだからね? クラブの出入りも…」



「知ってるよ。そうじゃないんだ。寝起きすぐで話すような事じゃないんだけど、お前に話しておきたい事がある」



「え…?」



アキはしばらく呆然と俺の顔を見つめた後、「嫌だ!」と叫びだす。



「え!? 嫌だけど!」



訳が分からなかった。腕を掴む力が尋常ではなく、少し震えている。急に嫌だと駄々をこねられるのは本当に訳が分からない。何だと言うのだ。



「ど、どうした…」



「先に言っておくよ! ヤだもん。嫌なものは嫌だよ。みっちゃんと離れたくない。別れないから! みっちゃん、ずっと一緒にいるって言ったもん」



キュンと心臓を鷲掴みにされて頬が熱くなる。好きなやつが勘違いをして、勢い余って別れたくないと駄々こねる。こんなに可愛い事あるだろうか。このままずっと勘違いをさせてやろうかと少し意地悪したくなったが、それも不憫で、アキの頭をぽんと撫でながら、その泣きそうな顔を見下ろした。



「勘違いすんな。俺はお前が死ぬまで一緒だよ」



死ぬまで。そう思ったのは本当で、こいつを殺すくらいならと腹を括ったのも確かだ。



「で、でも、じゃぁ、何の話?」



「長くなりそうなんだ。ひとまず紅茶淹れるけど、飲む?」



「うん、砂糖とミルク多めで。でもまだ朝の10時だよ? 眠くないの?」



「眠くない、というか、眠れない、というか…」



もごもご言いながら赤いポットで湯を沸かし、茶葉を入れた後、細い注ぎ口から茶漉しでカップへと移す。自分にはストレート。アキには、たっぷりの砂糖とミルクを追加した市販のミルクティーより甘いミルクティーを。



「うま!」



甘党な男は、それを飲むなり満面の笑みになる。その笑顔を横目に、俺はストレートの紅茶を一口、口に含んで転がしながら飲み込んだ。



「お話し終わったら、また一緒に寝るでしょ?」



「うん」



「分かった」



それなら良いと言わんばかりだ。ティーカップをテーブルに置き、アキの少し眠そうな目を見ながら口を開く。



「お前、今抱えてる仕事を全部俺に話せ」



「え、……なんで?」



「話せないか?」



「……は、話せない…」



アキはバツが悪そうに視線を逸らすと、揺れるミルクティーの水面を眺めている。



「集金行って脅しかけて、バックれようとするやつ取っ捕まえて、平々凡々、恐喝に暴行繰り返してるわけじゃねぇんだな? お前、俺の仕事以外に何を抱えてんだ」



「そ、れは…」



一切目を見ようとしないアキは、唇を震わせるだけで何も語らない。



「何を、抱えてる」



低い声で脅すように凄むと、アキはひくりと反応した。甘いミクルティーを飲み、一度口を一文字に固く閉じた後、ゆっくりと俺の目を見つめた。



「みっちゃんは、急に何でそんな事を俺に聞くの」



理由を言えば、こいつがショックを受ける事は容易に想像できる。だから保谷さんの命令に関して言う事を躊躇った。自分の親が子である自分を殺そうとしてる事実なんて、ひどく残酷だし、こいつが俺の言葉を信じない可能性もあった。保谷さんとこいつの関係は俺より長いからこそ、保谷さんの命令をこいつに伝えるのは最終手段だった。



「お前が俺に何か隠してるからだ」



「……そ、れは…」



仕事に関して何も言えないと口を噤み、動揺を見せる。その動揺を見て、ある考えが頭に過った。こいつがここまで俺に隠し通そうとするのは…。



「俺に言えないのは、俺が関わってるから、なのか?」



アキの眉間にぐっと皺が寄る。どうやら図星らしい。アキは自分を落ち着かせるように深呼吸をすると、重い口を開いた。



「みっちゃんは、今の天久会をどう思う? どうなっていくと思う?」



その質問の意図が分からずに眉根を顰めていると、アキは続ける。



「発展していくと思う? 俺達が命を懸ける価値があると思う?」



「…どういう意味だよ」



「じゃぁ、質問を変える。保谷さんがもし、本家の跡目に選ばれたら、この龍稜組は誰が仕切ると思う?」



「それは…望月のカシラだろ」



「本当にそうだろうか」



「は?」



怪訝な顔をする俺に、アキはゆっくりと答えた。



「あの人は、みっちゃんを跡目にするつもりだよ」



「………何?」



保谷さんが俺を跡目にする。それは、用心棒を付けた時に俺が懸念していた事であり、まさかなと否定していた事でもあった。



「本当はどこかで分かってたんじゃないの? 急に用心棒を付けるようになったんだ。ただの組員扱いじゃない。保谷さんは自分が会長の座に就いた後、側近としてみっちゃんを選ぶ。組の跡目も、みっちゃんだ」



「待て、…第一、俺は組を継ぐ気はない」



「みっちゃんにその気がなくても、あの人はみっちゃんを指名する。そしてみっちゃんはあの人の命令なら聞くしかない。…みっちゃんは保谷さんの事、すごく慕っているよね。保谷さんを命の恩人だと言い、保谷さんの為に手を汚し、組に貢献してきた。それは全て保谷さんの為、恩を返す為。そうでしょう?」



「そ、れは…そう、だけど…」



アキの言う事が事実なら、保谷さんは一体何を考えているのだろう。俺が従順な部下で、指示通り動くから側近に置きたい? いや、だとしたら昔から側近だった望月のカシラに組を継がせるのが順当だ。カシラはずっと保谷さんの命令に従い、信頼があるからこそ今のポストに就いている。なのに、俺が跡目、だと…? 到底、信じられるわけがなかった。



「みっちゃんはさ、あの人の願いを断れないんだよ。だから組を継ぐ事になるし、あの人の命じるがまま動く事になる。だから俺はみっちゃんには何も言わない。みっちゃんがあの人を慕っている限り、何も」



瞬間、保谷さんがアキの始末を命じた理由が、俺の中で明白になった。あぁ、そうか……。だからかと、俺はじっとアキの瞳を見つめる。



「………お前、保谷さんを裏切るつもりか」



アキは、保谷さんを裏切る気だ。そしてアキが保谷さんを裏切ると決めたのは、俺が跡目に選ばれる可能性が出てきた事が関係するのだ。アキは俺の目を見つめたまま無表情に言い放つ。



「みっちゃんが知らなくても良い事は、たくさんあるんだよ」



刑事だった俺が、ヤクザになったアキに初めて頼った日、アキに世界が違うと突き放された気がして、心底怖くなった。その感覚が、今、自分をまた襲う。あの時と同じ感覚。同じ、恐怖感。胸が騒つき、どうしようもなくなる。



「ど、どういう事だよ。言ってくれなきゃ何も判断できないだろ。…それともお前は単に俺を信用できない、そういう事か」



それは違う。そう否定してくれるだろうと思った。なのにアキは、困ったように笑みを浮かべた。



「みっちゃんとあの人の関係に関しては、そうだね」



そして、そう肯定したのだ。



「俺にも分からない部分だから。みっちゃんは本当に慕ってるから、あの人に害があるような事は絶対にしないと思うから」



「それは…」



確かに保谷さんに害を及ぼす様な事は絶対にできない。保谷さんの命令なら何だってすると決めたあの日から、その思いは変わらない。だって保谷さんは、組員でもない俺を匿い、俺とアキの為に、敵対組織に話をつけ、指まで落とした。アキと一緒に守ってやると言ってくれた。だったら俺は、それに報いる必要がある。あまりにも大きな恩義がある。


でも、そんな保谷さんの命令でも唯一従えない命令が、今日、下ったのだ。


俺はアキを殺せない。


そう頭の中で考えを纏めようと必死になっていると、アキは追い打ちを掛けるように言葉を足す。



「な? できないだろ?」



やけに低い声だった。ドスの利いた、冷たい声色だった。落ち着き払った恐ろしいくらいの冷淡な瞳に、背筋が冷たくなっていく。アキがこんな風に俺を見つめるなんて、思いもしなかった。



「もし俺に全てを語ってほしいなら、行動してみせてくれなきゃ。でもそれは、俺と保谷さんを天秤にかける事。そんなのできないよね、みっちゃんに」 



俺は眉間に皺を寄せたまま、何も返せず視線を下す。口を歪めると、アキは俺を見ながらふっと笑ったようだった。



「みっちゃん。ごめんね。抱えてる荷物が何か知りたいなら、俺の為に、保谷さんを殺すくらいの事をしてくれなきゃ。じゃないと、何も言えない」



こいつ、今、なんて…。



「それ、本気で言ってんのか」



アキは椅子の背に深く寄り掛かると、くくっと喉の奥で笑う。



「目の色変わった。あの人の事となると、みっちゃんは冷静じゃなくなる。それだけ慕ってるし、恩を感じてる。だから俺はみっちゃんに何も言えないんだよ。でもね、大丈夫。みっちゃんに何かしてほしいわけじゃないの。ただ、親を殺す覚悟がないなら、俺の抱えてるものが何か聞かない方が良いって事。それだけを言いたかっただけ。俺は別に、みっちゃんにあの人を裏切れとは言ってないから、勘違いしないでね」



アキは大きな欠伸をひとつして、「お話は終わり」と話を切り上げた。信じ難かった。あのアキが、保谷さんを裏切っている事が。


しかし何よりも自分にとって辛いと感じてしまった事は、アキは、俺との敵対をも視野に入れているという事だった。


俺は今、アキに詰め寄る事が出来ない。俺の中では判断材料となる情報が少ないのだ。そうなれば、やはり保谷さんの狙いを考えるしかないだろう。今のあの人にとって重要な鍵は跡目。もしそうなら、情報を知っているかもしれない人物はもうひとりいる。…これは賭けだ。もしかしたらその人は、俺を見るなり殺しにかかるかもしれないし、状況が悪化する可能性だったある


でも、その男はきっと、俺の知らない何かを知っているに違いなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る