第3話
内定目前まで行った会社に落ちてこの会社に就職したのだって偶然。
しかも研修後配置されたのが社長秘書とか最悪。
「なんで私を秘書にしたわけ?」
総務とか企画とか受付とか他部署に行く気満々だったのに。何が嬉しくて秘書なんだ!しかも社長秘書なんて希望者殺到の役職。希望すらしてない私を秘書にするなんて社長個人の嫌がらせに違い無かった。
二人きりになった途端詰め寄れば社長は楽しげに笑ったんだ。目茶苦茶ムカついた。
「あんたなら秘書を拒否出来るでしょ。
しなさいよ!」
「愛美の見た目と頭と気を使わない俺たちの関係。いい女避けだしこの就活難時代にこんないい働き口他に無いよ。秘書が務まらないならクビね。タメ口は二人きりなら許すけど公共の場では当然NG。」
「‥‥‥」
上から目線で言うこと言うこと。
その上この社長、最初の残業の時に家までわざわざ車で送って私の母親に挨拶しやがった。
『きゃああああっ愛美っ。優良物件じゃないのッ!』
何が優良物件だっつーの!上司だよ。
しかも高校時代からの腐れ縁。
私の親友の萌花に惚れてたのが私を側に置いた理由の1つじゃあなかろうかと思う。当時から首をかしげる程に気にかけてたしね。私経由で萌花と会うとか。
でもお気の毒。萌花は高校の頃から付き合い出した元ヤンの彼と結婚して今では3才の男の子の母親だ。
彼が特定の女と付き合わないのは初恋を引き摺ってるからだと私は確信してる。
萌花は小動物系で思わず抱き締めたくなる可愛いらしいタイプ。性格も素直。
『お綺麗ですね。』と初対面の男から言われ慣れてる私は女性としては平均身長。萌花とは見た目も性格も真逆。
しかも知り合った当時は口が悪くて歩く放送局だった私。
「恋愛対象になる可能性はゼロだっつーの。」
彼が私を側に置く理由は彼の素を知ってて恋愛関係を望まないキャラだからに他ならない。素を知ってるって言っても決して何から何まで知ってる訳じゃないし弱味を握ってる訳でも無い。
この嫌みな社長やたらと情報操作が得意で弱味とか絶対握らせない男だし。
だいたい超セレブなのだ。そのうち相応しい家柄のお嬢様と結婚するに決まっている。裏で遊びながら本命はしっかりキープしてるタイプ。
初対面で聞かされた通り私はその時までの女避けみたいなモンだろう。
「本日の業務は終了しましたのでこれで失礼致します。」
私は深々と頭を下げて社長に背を向けた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます