第2話

「相変わらず忍者みたいに私の前に現れますよね。今日はデートしないんですか。」


この出来る男はやたらとモテる。

そりゃあそうだろ。

ジャニーズ顔で背も高くて若くて金持ちで会社社長。頭が良いから後腐れの無い相手と適当に遊んでるし。

特定の女との噂が皆無だから落としやすい優良物件だと思われてるし。


「やきもち?可愛いね。」


くすくすと首をかしげて笑いやがった。可愛いのはそっちでしょうが。自分の魅力をわかっててわざと見せ付けやがって嫌味か。うん。嫌味に違いない!


「寝言は寝て言え!」


私の暴言に社長は眉をしかめた。不快なのはこっちだ。


「申し訳ありません。仕事のし過ぎで幻聴が聞こえました。」


嫌味なほど深々とお辞儀をしてやる。


「なんでそれだけの仕事でこんなに時間を取るのさ。」


それだけの仕事で!?


「他人を自分と同じだと思ってんじゃないわよ。不満ならクビにしたらっ!」


フゥ"ーッ!!  と怒れる猫みたく威嚇してやった。


「どうどう。落ち着いて。君の事はくれぐれもとお母様に頼まれてるしクビになんか出来る訳がないでしょ。」


「‥‥‥」


この腐れ外道が。いつの間にか私の母親を垂らし込みやがって…

私が秘書を務めるこの弓岡と言う男と出会ったのは高校時代。同期生の彼は当時から学校の王子様だった。

ああ。誤解されたくないから言っとくけど。私は決して弓岡真に惹かれてた訳ではない。

ひょんな事から私の愛する親友の萌花もえかが弓岡真と関わりを持った事で知り合っただけ。

当時から胡散臭い先輩だと思ってたし個人的付き合いと言えるのは一緒に隣町の神社にお参りした事位か。

もちろん超セレブの弓岡真とはまったく違う大学に進学したし萌花とも離れた大学時代は弓岡真との接点は皆無だった。

再会は就活。

幾つか希望した就職先の1つに弓岡関連の会社が在った。

っつても面談なんか人事担当がするわけだし社長との接点なんか皆無な筈が…

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