第3話-⑩
ダンッと大きな音と共に俺は後方に尻もちを付く。
「やっと捕まえた、お前さあ意外にも足はえーよな」
黒いパーカーに黒い帽子…こいつ店の前にいた…
「捕まえるの苦労したわ」
顔を上げたそいつの顔は見知った顔だった。
「…
「久しぶり真雪。朱雨は元気か?」
そう言って輝は笑った。その目は怒りに満ちていた。そこからの出来事はあまり覚えていない。輝は俺の胸ぐらを掴んでずっと怒鳴っていた。いつの間にか雨が降ってきて二人してずぶ濡れなのに輝はお構い無しに俺を罵倒した。輝に会うのは何年振りだろう。施設にいた頃に一緒だった。施設を出てからは俺は会っていないはず…なのに何で輝はここにいるんだろう…。
「お前のせいだろ!!」
輝は何を言っているんだろう。輝の言葉が理解できない。
「あいつは…朱雨は…!」
どうしてそんな泣いてるの…?
「…どうして、お前が生きてるんだよ」
その言葉だけがクリアに聞こえた。雨の音もかき消すかのようにはっきりと…。
「お前が死ねば良かったんだぁあ!!!」
輝は何か大事なことを言っていた気がする。でも俺の耳がおかしくなったのか何も聞こえなかった。輝の辛そうな顔とか怒り狂った瞳とか何処か他人事でどうして俺はこんなに輝を怒らせているんだろう。そして輝は膝を着いて俺の前で泣き崩れた。その光景に何も感じなくて、俺はおかしくなったのかな…?その光景をただぼーっと眺めるしか出来なかった。
どうやって帰ってきたのか…気づいたら俺は濡れた身体でリビングにいた。何も考えられなくてぼーっと窓から見える暗闇を眺めていた。
「………」
何してたんだっけ…。ふと棚に視線を移すとヒラッと何かが落ちた。それは朱雨との写真だった。その瞬間頬に何かが流れる。それが涙だと気づいた時俺は笑った。
「…なんか、もう」
よく分からない感情が気持ち悪い。なんで泣いてるのかも分からない。どうしたらいい…どうしたらいいの?俺…何をしたらいいの…?ねえ、朱雨…俺どうしたらいい?
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