第5話

唖然とする私に顔を近付けて、繋いでいない左手で私の顔に付いた髪をそっと払った。


「翼ちゃんと全部同じ講義を受けられるように、取り直したんだ。まだやり直しがきいたからね」


「……馬鹿なの」


「これからは全部一緒だから。全力でアピールするから宜しくね翼ちゃん」



そんなの聞いてない。

というか、頭がおかしいんじゃないの。


頭痛がして、堪らずこめかみに手を当てる。普通、そこまでする?


そんなことされたら引くわよ。

気持ち悪いとさえも思うけど、きっと私の心情なんてお見通しなんだろう。


緩やかな笑みを口許に浮かべ、あろう事か皆が見ているというのに「大好きだよ翼ちゃん」と囁いたのだった。





***




「やっ、止めて。これ以上私に触れたら、噛み付くわよ」


今日は2限までしか無く、早々に帰る筈だったのにこの男とまた帰りも一緒だなんて冗談じゃない。


トイレに行くと告げて、回避しようとしたというのに。

あっさりとバレ、強引に引っ張られるがまま気が付けば男の住んでるマンションに連れてかれてしまっていた。


そして今、大ピンチに陥っている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る