第8話

「昨日から調子が良くなかったみたいなんですが、今朝母親から連絡がありましてね。今週いっぱいはバイトも無理だろうと話で……」


 店長はこめかみを押さえて目を閉じた。


 「……まあ、接客のほうは私がなんとかしますから、大丈夫です。いつもバイトの子たちに甘えさせてもらってますからねえ。クルミくんとまどちゃんもいるんだし」


 わたしはぐっとこぶしを握った。


 「わたしも頑張ります。裏方は任せてください!」


 いつもお世話になっている店長とさえこさんのために、頑張ろう。料理も慣れてきたころで助かった。


 「それは心強い」と、店長は笑っていた。

 

 そのときキッチンの方から、焦ったような声が聞こえてきた。


 「店長! ホットサンド、できましたよ! 持って行ってください」


 「おっと、クルミくんが呼んでる。じゃあまどちゃん、準備ができたらキッチンのほうにね」


 わたしはもう一度、こぶしを握っておなかに力を込めた。


 「はい!」


 店長は微笑みながらエプロンを結び直して、張り切った足取りで表へ出ていった。










 慌ただしいながらもランチタイムは無事に回り、客足がいったん引いたところでくるみさんはばたばたと退勤していった。手に握りしめたスマホを耳にあてながら走っていく。店長はその後ろ姿を見送ってから、ふうっと息を吐く。


 「なんとかなりましたね」


 「なりましたね……」


 キッチンでランチメニューを一人で作り切ったわたしは、今までにない達成感に満たされていた。


 「優秀な料理人がいてくれてよかった。今月はお礼に、特別手当を出さないとね」


 「いえ、いえ、そんな」

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