第3話
もっと力を抜いて。自信をもって。堂々と。
さっき店長から言われた言葉と一緒に思い返す。ううん、店長やさえこさんだけじゃなくて、これまでいろんな人に言われてきた言葉。
自信がない。何度も確かめないと自信がもてない。慎重に、丁寧にと思うあまり、何をやっても時間がかかる。間違っていないか、失敗しないかと、いつも緊張が抜けない。
堂々とできたらどんなにいいかって思う。でも、自信って、意識的に切り替えられるものじゃない。
店長はこの店の経営者だし、さえこさんも何年もホールに立っている。それに二人とも、お洒落で垢抜けていて大人だ。
それに引き換えわたしは、なんとか大学に合格して地元から出てきたところまではいいものの、田舎の匂いが消えない小娘で、お洒落でもなく、大人でもない。両親に似て背だけはそこそこ伸びたものの、無駄に大きいだけで役にも立たない。
コンプレックスまみれのわたしは、さえこさんみたいにキラキラしたお姉さんに憧れもするし、醜く嫉妬したりもする。
誤魔化すように笑ったわたしをなにか言いたげに眺めていたさえこさんは、ふと壁の時計に目をやる。
「もう三時だ。まどちゃん、上がる時間じゃない?」
「わ、そうですね」
途中になっていた片付けのことを思い出して、どうしようと立ちすくんでいると、さえこさんが流し台に近付いてきた。
「いいよ、あたしやっとく。ホールも今は暇だし」
「え、大丈夫ですよ。この後も急いでないですし」
「気にしなくていーから。ほら、時間時間」
「でも……」
おろおろしだすわたしに、また片眉を上げて口を開いたさえこさんが、不意にぴたりと動きを止めた。
「なに、この匂い」
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