第33話
「マキちゃん、また寝不足?」
「……うーん」
机に突っ伏したあたしを起こすわけでもなく、紗奈は顔を覗き込んでくる。
「なんか、元気ないね。悩みごと?」
ほんわかしたこの幼馴染は、ときどき妙に鋭くて困る。
「いやー……悩みではないんだけど」
「うん」
「……紗奈、好きな曲とかってある?」
紗奈はこてん、と首を傾げた。
「ピアノの話?」
「いや、ポップとかロックとかで」
紗奈はちょっと考えたあと、最近流行っている歌の名前を言った。
「ふうん」
「それが、どうかしたの?」
……別に、どうもしないのだけれど。
「その歌が好きな理由は何?」
紗奈はまた、きょとんとした目であたしを見た。
「理由?」
「うん」
紗奈はうつむいて考え込む。あたしはこの子に、なに尋問みたいなことをしてるんだろう。
「明るくて、聴くと元気になるし、メロディが耳に残るし」
「うん」
「それで聴いてみたら、歌詞も可愛くて、好きになったんだと思う」
「そっか」
あたしが何を知りたかったのか腑に落ちないらしい紗奈は、首を傾げたまま。
あたしだって、なんで紗奈にこんなことを訊いているのかわからない。
だけど今日のあたしの口は、どうやらどこまでも勝手に動くらしい。
「紗奈」
「なあに、マキちゃん」
「例えばその曲に、メロディか歌詞か、どっちかしか残らないとしたら、どっちを取る?」
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