第25話
「――と。それで、荒井がこの前、この子を連れてきたってわけ」
「あの、ライブ、本当に感動しました!」
野川さんの説明に思わず口を挟むと、優しい笑顔が返ってきた。
「蒔子ちゃん、わざわざメールで感想まで送ってくれたんだよ」
「へー、どんな?」
「エッ、やめてください見ないで!」
ポケットから出したスマホをいじっていた野川さんはあたしに向かって、にっこり、微笑んだ。
お日さまみたいな、笑顔。
そのキラースマイルにぽかんとしている間に、
「――へえ」
スマホは竹本さんと星野さんの手に渡っていた。
しまった。魔法にかけられた。
が、時すでに遅し。もともと、たいして長いわけでもなかったメールを読み終えて、二人は野川さんにスマホを返した。
「すげー、照れるな」
ぽつりと言った星野さんに、二人が頷いて、恥ずかしそうに笑った。
やめてくれ。
今いちばん恥ずかしいのは、間違いなくあたしだから。
「綺麗な文章だろ?」
優しい笑みを浮かべる野川さんを直視できなくて、うつむいた。
三人はしばらく無言であたしのメールを読み返していたけれど、ふいに竹本さんが口を開いた。
「ひとつ、訊いてもいい?」
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