第24話

野川さんは目を瞬いた。そして、


「……俺らだけの秘密、か」


――ふわっと笑った。


ほんとうに、この人の笑顔は人を幸せにすると思う。


「なんかいいな、そういうの」


じゃあ行くか、と野川さんは伸びをして立ち上がった。


「そろそろだ。スタジオに行こうか」


あたしは頷いて、残っていたお茶を飲みほした。




* * *




「……どう?」


「すごいです…! かっこいい……」


激しいギターに、存在感のあるドラム、それにベースの、独特のリズム。やっぱりこのバンドは他とは違う、と惚れ惚れしながら思う。


野川さんたちは声をあげながら笑った。


「で、野川。この子、誰なんだよ」と、ベースの星野さん。


「彼女じゃないの?」と、ドラムの竹本さん。


なんか最近、兄貴の彼女になったり野川さんの彼女になったり、忙しいなあ、あたし。


野川さんは呆れたように、


「違うって。この前言っただろ、荒井の妹さん」


「あ、そうなの? なーんだ」


「そう言われてみれば、似てるかも」


この辺とか、と星野さんは自分の目元を指さした。


どうもこの人たちは兄貴のことを知っているらしい。訊けば、全員同じ高校だったという。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る