第22話
「で、連絡も忘れて駆けつけてくれたってわけ?」
裏口から入れてもらえたあたしは今、ライブハウスの事務所の中でお茶を出されて座っている。
「だって野川さん直々のお誘いですもん」
「だからってその格好で……」
野川さんは困ったように、あたしのセーラー服姿を観察した。
「本当に、桜町のお嬢さんなんだなあ」
「桜町だけど、お嬢さんではないです」
「お嬢さんだよ」
野川さんは後ろ頭を掻いた。
「なんか、俺が悪い大人になったような気がするよ」
「? なんでですか?」
野川さんは盛大にため息をついて、頬杖をついた。
「……蒔子ちゃん」
「はい」
「この前のメール、すごく嬉しかったんだ。ありがとう」
「……」
「あんなふうに感想を伝えてくれる人は、なかなかいないからさ」
野川さんの耳がちょっぴり赤いのに気づいてしまって、どぎまぎしながら自分の膝に目を向けた。野川さんもあたしのほうを見てはいなくて、それには気づかず続ける。
「楽器についても、メロディーについても。俺がこだわってるとこ、ちゃんと気づいてくれてるんだなって思った。
それに、蒔子ちゃんは本当に音楽が好きなんだ、って」
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