第21話

で。また、ここに来てしまった。


大通りから見上げるこぢんまりしたビルは、前と違ってまだ空が明るいからか、看板の青が鮮やかだ。


……それで、ここからどうするんだ、あたし。


勢い余って制服のまま、学校から直で来てしまったので、ものすごく入りづらい。このセーラー服は完全に場違いだ。


正面からはキツすぎる。できれば裏口とかから侵入したいんだけれども。とても、一人では入れない。


……今更だけど、野川さんに連絡してみようか。





…………………


TO:野川さん


今BLUEの前です。助けてください。


…………………




……なんか変な気がするけど、いつまでもここに立ってるのもイヤだったので、考えるのをやめて送信する。


ふう。早く来てくれるといいけど、




「――蒔子ちゃん!?」




ガタッと音がして、正面のドアが開く。


そこには息を切らしてあたしを見つめる、野川さんの姿があった。


「野川さん」


「上から見えたんだ。なんだ、来るんなら連絡くらい、」


ちゃらりーん。


……間抜けな音が、野川さんのポケットからこぼれ落ちた。

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